航空各社で相次ぎ協約締結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年9月

夏期休暇中に多くの航空会社で協約改定交渉に絡んでストが行われる可能性が指摘されていたが、ブッシュ大統領がスト回避への姿勢を早くから明らかにしていたこともあって、結局ストには至らず、6月末までに相次いで協約締結にこぎ着けた。

デルタ航空が100%保有する地域航空会社コムエアー社では、パイロット労組(ALPA)が2001年3月26日以来ストを続けていたが、地域航空会社のの中では最高レベルの報酬を定めた暫定協約を6月中旬に締結した。約1350人(労組によると、このうちの何人かは既に他の会社に転職)の組合員は、この暫定協約を6月22日に正式に承認し、89日間に及んだストが終結した。パイロットのうち、賛成票を投じたのは733人、反対票は408人で、多くのパイロットが協約に満足していないことが分かる。協約により、コムエアー社のパイロットの年収は、各パイロットの先任権に応じて、2000年の1万6000ドル~6万9000ドルから、直ちに2万1000ドル~8万5000ドルに増額される。コムエアー社が購入を検討している70人乗りジェットを操縦する場合、現在の50人乗りジェットを操縦する場合に比べて報酬が10%から12%増額される。しかし、多くのパイロットは、乗客定員40%増に比べて増額幅が小さいと考えている。コムエアー社が、給与の2%から10%にあたる金額を拠出するプランを設けるなど、退職給付も改善された。しかし、このプランは、労組が要求していた確定給付型プランに比べるとかなり見劣りする。ワークルールについては、いくつかの面で改善されたが、パイロットにとって不利な変更もあった。同社は、最近解雇された、ストに関与していない2400人の労働者のうち、まず1300人を4,5週間以内に再雇用し、運航が平常時に復帰するにつれて、さらに再雇用者数の増加を検討する。 

次に業界3位のデルタ航空に勤めているパイロットの協約についてであるが、パイロット労組(ALPA)9800人のうち70.3%の一般組合員が投票して、2001年6月20日頃、5年協約(本誌2001年7月号参照)を承認し、同社パイロットは、ユナイテッド航空パイロットの報酬を僅かに上まわる業界最高水準の給与を得ることになった。

業界首位のアメリカン航空とその親会社AMR社は、2万3000人の客室乗務員労組 (APFA)との33カ月の交渉の末、2001年6月30日に労働協約について原則合意した。同社の交渉については、もし夏季休暇中にストライキが予定された場合には、ブッシュ大統領がストを阻止すると言明していたことから注目を集めていたが、全国調停員会によれば、午前零時のスト期限まで6時間弱残して両者が合意に達した。もしもストが行われた場合、繁忙期の独立記念日(7月4日)直前の7月1日から同社旅客機の運航に支障が出る可能性があった。しかし、旅行会社や旅客は、大統領がストを阻止することは確実で、夏期のストはあり得ないと考え、アメリカン航空の航空券の買い控えは、ほとんど起こらなかった。

その後、労使は、原則合意された協約に盛り込む諸条件について調整を行い、客室乗務員が直ちに9%の賃上げを得ること、1998年11月から1999年12月31日までの期間に遡り、この期間の8%の賃上げ分を一時金として得ることなどを定めた。APFAによれば協約対象期間6年間の賃上げは25%以上に及ぶ。7月11日、APFA指導部は全員一致で、この暫定協約を承認した。今後、一般組合員の承認を受けて正式な協約となる。

なお、暫定協約は、2002年と2003年に利益分配制度による利益分配の上限を年間基本給の3.25%とし、2004年に現行の8%に戻すとしている。アメリカン航空の客室乗務員組合は、利益分配制度を代償に大幅な賃上げを提案した同社の提示案を1999年に拒否していることから、もし一般組合員が暫定協約を拒否するとすれば、利益分配制度が問題になるだろうとAPFA指導部は考えている。

また、アメリカン航空は2001年6月24日、1万5000人の機械工、整備工および関連労働者と3年暫定協約を締結した。この暫定協約は2001年3月1日にまで遡って適用され、直ちに基本給を8%から22%上げ、2年目、3年目にそれぞれ3%の賃上げが定められた。暫定協約は、給付やワークルールなどについても定めている。整備工らを代表する運輸労働者労組(TWU)によると、一般組合員が協約内容を通知されてから協約を正式に承認するまで約1カ月間かかるという。

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