共産党大会で新書記長選出、10カ年社会経済目標決議

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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2001年4月22日まで4日間開催されたベトナム共産党第9回党大会で、ノン・ドク・マイン国会議長(60歳)が、新共産党書記長に選出された。少数民族から初めて書記長となるマイン氏は、ハノイ中央農林大学で林業技術者としての教育を受け、レニングラード林業研究所に数年間在籍した後、地方政府で林業関係の公職に就いていた。その後、バクタイ省人民委員会議長などを歴任し、1997年より国会議長を務めていた。

マイン書記長は、レ・カ・フュー前書記長が属する保守派、そして、ドイモイ(刷新)路線を押し進めようとする改革派のどちらにも属さないが、主に改革派の支持を得ている。一方、共産党中央委員会の構成員は20人削減されて150人となり、新委員については55歳以下とする年齢制限が設けられ、世代交代の促進が図られている。5年に一度開かれる共産党大会は、最高レベルの意思決定を行う場であり、今後の政府の政策にも党の方針が反映されることになる。これまで外資導入に積極的ではなかった共産党が、党方針として外国投資の導入に言及したことから、米越通商協定の発効や2005年までのWTO加盟をにらみ、外国人に高い料金等を課す二重価格制度の撤廃など、国内の改革に政府が今まで以上に積極的に取り組むものと考えられる。

書記長選挙の直後、マイン書記長は、ハノイで記者団に対し、党の団結のために尽力し、腐敗や汚職をなくすための闘いを進めると述べ、目標として、2020年までに経済の工業化を達成することを掲げた。共産党大会参加者の多くは、ここ2、3年のベトナム経済が予想以上の成果を上げていると述べたが、これからの経済運営には、乗り越えなければならない多くの課題があると注意を喚起した。

政府は、2005年までの社会経済発展目標を定め、大会で決議された。その内容は、GDP成長率は年平均7.5%、産業別のGDP構成比は、農林水産業は、GDPの20%、鉱工業・建設業は38%、サービス業は41%とする。人口増加率は、年平均1.22%とし、出生率は、年に0.05ポイント減少させる。新たに750万人の雇用(うち30%は技能労働)を創出し、貧困率を10%に減少させるというものである。

また、2001年から2010年期の10カ年社会経済発展目標を第9回共産党大会で決議した。その主要事項は、以下のとおりである。

  1. 発展の乏しい状況から抜け出し、人民の精神的物質的生活を高め、2020年までに一応の近代的工業国に成長するための基礎づくりをする。
  2. 人材、科学技術力、インフラ構築、経済的潜在力、国防・治安の向上。

  3. 社会主義に沿った市場経済体制の基本形成。

  4. ベトナムの国際的地位の向上。

  5. 2010年のGDPを少なくとも2000年の2倍(年率7%以上の成長)にする。

  6. 農業労働者比率を50%程度(現在は約3分の2)に下げる。

  7. 投資をGDPの30%以上にする。

  8. 輸出増加率をGDP成長率の2倍にする。

  9. GDPに占める農業シェアを16~17%(現在25%)、工業シェア40~41%(現在35%)、サービス業シェア42~43%(現在40%)とする。
  10. 人的資源開発指数(HDI)の大幅アップ。
  11. 人口増加率を1.1~1.2%にする。
  12. 都市と農村双方の失業対策の実施(都市部の失業率5%以下)。
  13. 職業訓練を受けた労働者の比率を40%にひきあげる。
  14. 就学年齢に達した児童全員の就学。中学校教育の全国普及。
  15. 医療を受ける権利の確立。5歳以下の栄養失調児比率を3分の1から15~20%程度に下げ、平均寿命を71歳に上げる。
  16. 2001年から2005年までの年GDP成長率を7.5%程度とする。

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