ハンガリー/退職モデルの再編に関する急進的な提案:定年制の廃止

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

定年制のない退職制度の考え方は、ハンガリー政治家の発明というわけではない。最近、英国政府が、同様の提案を行った。英国の計画によれば、退職制度について提案されている変更は、少なくとも5年間の準備期間を必要とし、EU基準を尊重するものとなる。それは、対象となる人々の年齢、性別、および身体的理由による差別を禁止している。(人種問題はきわめて敏感な問題であり、英国保守党内においてさえも、現在この問題に対立があることを参照されたい。)

注意深い英国人は、新しい退職制度モデルの実施に5年間をかけようとしているが、残念ながらハンガリーの定年廃止提案は、いかなる猶予、もしくは準備期間にも言及していない。また次期総選挙を1年先に控えて政治的に示された提案について、詳細は一切知らされていない。ハンガリーにおける状況をより良く理解するためには、現行の退職制度の詳細を知ることは意味がある。この問題を以下に説明する。

退職制度の概観

中央統計局(Kozponti Statisztikai Hivatal:KSH)の、1990年代後半から今日までの統計によれば、退職年齢は、男子で58歳、女子で54歳である。現在、人口の8%が、60歳を超えて働いている。国家補助(例えば、退職年金、障害者手当等)を受け取っている人口は、1990年で190万人であったが、2000年には、この数は、310万人(もしくはほぼ40%)まで増加した。

KSHの統計年鑑では、人口の68.3%が、16-64歳の年齢集団に属し、ハンガリー経済の全部門を対象とする就労人口の規模は、389万人となっている。これは、全国の退職引退人口より25%だけ多いというに過ぎない。

ミックス年金制度(これは、民間と公的制度の組み合わせを意味する)の導入に関する1997年の政府決定は、1998年1月1日に法的に実施された。

男子の退職年齢を48歳から62歳にまで引き上げることは、1990年代初めに議論された。ハンガリー国家には、多数の退職人口の財政的手当てが困難だったからである。62歳という新しい定年は、妥協の産物であった。65歳という退職年齢を拒否した主な理由は、ハンガリー男子人口の高い死亡率であった。かなりの数の男子は、退職年齢前に死亡する。

統計によれば、2百万人以上が、民間の年金制度に加入している。新しい計画では、政府は、現行制度に基づく従業員の退職基金への拠出金の透明度を高めたいとしている。個人は、自分が全国(もしくは公的)退職基金に払い込んだ財政的拠出に関し、また当該退職制度によってどのくらいの額の退職手当が保証されるかについての情報を得ることができる。他の透明度に関する変数は、(実際にはドイツの制度の模倣を示しているのだが)以下のように作用するはずである。拠出している労働者にとって、自身の拠出は、1「点」を表し、彼らは毎年、労働期間中に何点累積したかを知らされる。

以下の表は、過去数年の実質年金および実質賃金の変化を示すものである。

年金の実質価値並びに正味賃金の変化(対前年度比)

実質年金 実質正味賃金
1998 6.39% 3.59%
1999 3.82% 2.45%
2000 0.91% 1.46%
2001 4.88% 4.24%

(*)公式(政府の)インフレ予想並びに予想される賃金および年金増加により計算

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