ハンガリー/就業率の改善

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

ハンガリーの労働市場、並びに労使関係専門家の間では、EU全体の就労人口比率は、ハンガリーより高いことがよく知られている。しかし、EUのより高い就業率は、EU加盟諸国における多数のパートタイム労働者によるものである。このパートタイム就業形態をフルタイム就業形態に変換するとするならば、EUの就労人口比率はハンガリーのそれと較べてさほど高くはないであろう。

本報告では、EU諸国と比較して、ハンガリーの雇用状況に関する短いが詳細な統計分析を提示する。

ハンガリーの就労人口比率(15歳から64歳)は、62.1%であるが、EUのパートタイム労働者をフルタイム労働者に変換すると、EUの就労人口比率は56.6%になる。このようにして計算されたEUの就労人口指標は、ハンガリーの就業率55.4%と際立った違いはないことになる。この労働市場の構図は、より現実的なものである。というのは、ハンガリーでは、パートタイム労働者は、労働人口のごくわずかな割合しか占めていないからである。

1996年、ハンガリー労働市場を特徴付けたのは最低水準の就業率であった。同年は2人に1人程しか雇用されていなかったのである(52.6%)。この年以降、ハンガリーの労働市場は、継続的に改善を遂げていると言えよう。この低い就労率は、国家社会主義制度崩壊後の根源的な国家経済のリストラが原因だと言える。国家計画に基づく社会主義制度から、市場経済への転換の主な影響の1つは、大量の失業であった。その複雑で、痛みを伴う社会的、心理的、および経済的影響によって、150万の雇用が失われたのである。

一般的に改善しているハンガリーの労働市場状況の中で、全国平均の就業率(55.4%)と較べた際に、異なる年齢集団の間に、顕著な就業率の違いがある。例えば、最も高い就業率の年齢集団は、表に示されている。

年齢集団による稼動率(%)

年齢集団 就労率
25~29歳 69.7
30~39歳 75.4
40~45歳 72.7
全国平均 55.4

年間の雇用規模は、384万9000人で経済部門別内訳は、以下の通りである。

1:サービス部門: 60%

2:工業および建設産業: 34%

3:農業: 6%

過去数年間、農業においては3万6000以上の雇用が失われたが、9万の工業並びにサービス部門での雇用の増加が記録された。工業部門では、下記の部門が最も高い割合で雇用を喪失した:鉱業、鉄鋼、被服産業部門。他方、主に大量の海外直接投資の結果、自動車並びにマイクロエレクトロニクス部門では雇用が増加した。

国際労働機関(ILO)基準で計算された失業率は、1999年で6.9%であり、これは、東欧諸国を特徴付けている9.2%の失業率よりは良好な数字である。ハンガリーでは、失業率が最大だったのは1993年であり、その年の失業率は11.9%であった。

EU諸国では、失業率が高い国も低い国もある。例えばオーストリア、デンマーク、オランダ、およびポルトガルなどの失業率はハンガリーより低いが、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、および北欧諸国ではハンガリーと比べて失業率が高い。

最後に、ハンガリーはEU諸国の動向に類似しており、低下する失業率との関係で就労人口率は改善されていることを指摘するのは意味があるだろう。数年前、多くのハンガリー国民が労働市場を去り、実際「非就労人口」の地位を選択した。今日、新たな傾向が登場している。非就労人口は、再度労働市場に参加しようとするか(例えば、パートタイム労働等)、永久に労働市場から去っていく。

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