政府、EU指令「情報提供・協議」を受け入れる

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

英政府は2001年6月12日、ルクセンブルグで開催された欧州雇用社会政策理事会で、「従業員に対する情報提供・協議に関するEU指令案」に同意した。同指令に対して英政府は反対の立場を貫いてきたが、今回の「思わざる同意」(『フィナンシャル・タイムズ』)により、従業員への情報提供に関する共通のルールが欧州全体に敷かれることになる。

同指令は、一つの加盟国内で50人以上を雇用する企業に対し、従業員に最低限の情報を提供し、また従業員と協議することを求めるものである。企業リストラの影響を緩和しようと意図したものだが、英政府は同指令に対し、「補完性の原則」(注)に抵触するとして反対してきた。

今回合意を見たのは当初案ではなく、議長国スウェーデンの提示した妥協案。同指令を従業員数50~100人の企業へ適用する猶予期間を、当初案は3年としていたが、妥協案では7年に延長された。

英政府が同意に転じた背景には、妥協案が提示されたこと以外に、ユーロ参加を最重要課題に二期目の政権担当を果たした労働党政府にとって、欧州問題で孤立するのは得策ではないとの意図が働いた模様だ。同指令に対しては、アイルランド、デンマーク、ドイツも反対の立場を取ってきたが、今回の理事会を前に、妥協案を受け入れるとの観測が伝えられており、投票になればイギリスが孤立するのは明らかであった。

今回の英政府の方針転換に対して、英国産業連盟(CBI)は、使用者の経営権を堀崩しかねないと強く反発している。一方、労働組合会議(TUC)のモンクス書記長は「今回の合意により全欧州の従業員が自社の計画や見解を知る権利を初めて獲得することになる」としてこれを歓迎している。

もっとも、議長国スウェーデンのモナ・サリン雇用相は、最大の難関は今回の理事会よりも欧州議会であり、指令が承認されるのは間違いないが、さらに変更が加わる可能性がある、と指摘している。

(注)補完性の原則とは、「提案されている活動の目的が加盟国によって十分には達成されず、かつ、当該活動の規模もしくはその効果の点から考慮し、共同体による方がよりよく実現されうる場合にのみ、またその限りにおいて活動を行う」ことをいう(マーストリヒト条約第3b条)。

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