電力不足による節電の実施で家庭も企業も大混乱

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年8月

ブラジルは消費する電力の92%を水力発電に依存しているが、産業の中心部となっている南東部、中西部と、乾燥地帯の東北で雨季(10月から4月まで)の降水量が異常に減少したことと、過去十数年の電源開発投資の縮小のために、深刻な電力不足に見舞われている。次の雨季がくる10月までの発電に必要な貯水量が確保できず、政府は第一弾の試みとして、6月に配電量を昨年同期に比べ平均20%削減し、節電義務を果たさない家庭や企業からは罰金を取るとともに、3日間の供給停止措置とすることを決定。家庭生活、企業の経済活動ともに、どう対応するか大変苦慮している。

こうした状況から経済アナリストやエコノミストは、政府が2001年に期待しているGDPの4.5%成長について、達成見込みを失ったとして一斉に下方修正を行っている。政府系のゼツリオ・バルガス財団自体がGDPは1.5ポイント低下、新規雇用増も政府が当初期待していたレベルに比べ約82万人分の減少となるものと試算している。産業界では節電義務に伴う作業停止分を将来、超過勤務で埋め合わせるよう従業員に提案したり、節電中の給料を差し引く提案や、人員削減計画を発表する業種も現われるなど労働者を不安にしている。

2大中央労組は2001年5月15日以来、停電に抗議して、1時間のストを行ったり、夜間にはろうそくと石油ランプを灯して「石器時代への逆戻り」だと抗議デモを行ったりしている。同時に、節電計画実施中は全ての労働者の雇用保障、最低10%の労働時間の即時短縮、超過勤務の禁止、節電による解雇を避ける手段として商業の日曜営業禁止、電力消費義務超過分に対する罰金の廃止などを政府に提案した。

しかし、常に政治的に対立している2大中央労組は同じような要求を政府に提出するにも共同歩調は取らず、別々に提案しながら相互に中傷しあっている。

一方では、サンパウロ大学の教授が「月曜か金曜日を休日とすれば平均20%の節電義務を課するよりも国民に苦痛を与えることなく30%は節約出来る。」と提案して、賛否両論を引き起こした。

政府は第1期に20%節電を実施して、それでも不足するなら7月から毎日一定時間の一律停電を実施する検討を行っているために、週1日の休日増加案は切実な問題として企業間で話題になっている。サンパウロ州工業連盟では「週1日休日が増加すれば、生産は減少し、コストは上昇するために休日分の給料を払うゆとりはなく、臨時休日分は差し引く。」と発表して労組と対立している。

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