政府が大企業を対象とした解雇規制強化案をまとめる

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年7月

今年に入ってから英国小売業のマークス&スペンサー、食品のダノン、家電のムリネックス、AOM=エア・リベルテなど、大手企業の人員削減計画が相次いで発表された。とくにマークス&スペンサーの店舗閉鎖計画は、労働法典で定められている事前協議がなかったとして、従業員側が提訴するなど(パリ大審裁判所は従業員側の申し立てを認め、店舗閉鎖計画の差し止め命令が出された)、労使の対立は深刻化している。雇用を最優先課題に掲げるジョスパン政府はこうした事態を重く見て、とりわけ大企業を対象とした解雇規制強化案を急遽まとめた。経済的理由に基づく解雇はすべての場合に最低補償額が2倍になるなど、人員削減を発表する企業の義務が強化される。ギグー雇用相が4月24日に発表した法案の内容は次の通りである。法案は社会近代化法案とともに国会で審議が行われる。

企業内の力関係

ギグー雇用相は、ジョスパン首相が描いた補償額の引き上げ=再就職=再活性化という3段階過程に、企業内で組合と労働者に一層の力を与えるとされる一面を加えた。すなわち、大企業の役員会、監査役会、もしくは取締役会は、計画を決定する前に、目指す合理化案の「社会的および地域的な影響」について検討する義務を負うことになる。

また、企業委員会が合理化計画の正当性についてコンサルタント事務所の評価に依存できる可能性が意見聴取の後だけでなく、合理化計画の実施局面にも拡大される。企業委員会はコンサルタント事務所の意見に加えて「対案」を発表することが可能になる。さらに、労働当局は合理化計画を審査するために追加的な期間を与えられることになり、必要ならば、義務不履行証明書を作成することができる。解雇者数が100人を超えない場合の手続期間は、8日から12日になり、当局は従業員代表の2度目の会議が行われる前に介入することが可能になる。

補償額の引き上げ

経済的理由に基づく解雇の最低補償額が2倍になる。すなわち、勤続年数×月額賃金×1/10が1/5になる。しかし、すでに多くの企業がこれよりも高い水準を採用しており、一部の産業部門でもすでにこの水準を採用している。たとえば、金属鉱業連合(UIMM)の部門協約の場合、勤続年数が5年を超えると、この数字になる。

再就職

すべての企業は雇用が脅かされている従業員のために、雇用が失われる前に、能力・進路診断書を提供しなければならない。しかし、従業員1000人以上の企業グループの場合、望む従業員には最長6カ月の再就職休暇を提供しなければならない。したがって、予告期間が実際には延長されることになる。この期間全体にわたり、該当する従業員は企業から賃金を受け取る。PAREの調印当事者によって廃止された転職協定から着想を得たこの手続きは職業経験の承認と連動されることになる。

再活性化

新たな事業活動を創設するために独自の措置を実施していない従業員1000人以上の企業は、金銭的拠出に応じることになる(金額はまだ未定)。雇用省によると、この額は解雇される従業員の数に比例して計算されるが、法定最低額が定められることになる。

政府はこれらの修正の他に、2つの方向を打ち出したいと考えている。50歳以上の高齢労働者を解雇する企業に適用されるドラランド課徴金は、これまでの1年ではなく、16~18カ月分の賃金になる可能性がある。企業の失業保険拠出に対する「等級別料率制」の問題も提起される。この種のペナルティは国によって異なるが、米国などにも存在している。

ところで、連立与党の共産党は政府がまとめたこれらの修正案では不十分だと考えており、「繁栄企業の解雇禁止」などさらに厳しい措置を求めている。

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