夏のスト回避に向け航空業界の労使交渉続く

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年7月

航空業界各社でスト回避に向けての労使交渉が続いている。規制緩和により1990年代半ばに低収益構造に陥り、2001年第1四半期には、既に大手7社中5社が赤字に陥っている。米航空業界では、パイロットなど従業員の条件の低下が続いている。ユナイテッド航空でパイロットが残業拒否の戦術で2000年8月26日に、勝ち取った大幅な待遇改善(本誌2000年12月号参照)を各社従業員も自分たちも手にしたいと願っており、今後の景気低迷を予想する経営陣との協約改定交渉は、困難が予想されている。ブッシュ大統領は、運航に支障が出ないようにとスト回避に非常に意欲的で、これまでに合意に達したノースウエスト航空機械工労組の協約、デルタ航空パイロットとの協約(暫定)では、大統領の意向を受けた全国調停委員会が交渉とりまとめに貢献した。

ノースウエスト航空の機械工労組(Aircraft Mechanics Fraternal Association)の組合員は、前協約の終了以来、4年間にわたった交渉の後、2001年4月9日に経営側と暫定合意に達した妥結案を5月9日の投票で承認した。妥結案の内容は基本給を、2001年24.4%、2002年および2003年に3%、2004年5月に4%賃上げし、さらに、1996年10月以降の賃金についても約3.5%の遡及賃上げを行うというもの。

デルタ航空のパイロット労組(ALPA)は、2001年4月22日に、2000年5月2日に遡って適用開始の5年間暫定協約を締結し、4月29日突入予定のストを回避した。暫定協約が定めている平均賃上げは、主要路線のパイロットに対し、協約1年目に平均11.3%、2年目以降各年4.5%とするもの。低料金路線のデルタ・エクスプレスのパイロットに対しては、5年間で計63%とさらに大幅な賃上げとなっている。デルタ航空のパイロットに業界最高水準の給与を与える暫定協約だが、デルタ・エクスプレスのパイロットに適用されている比較的低い賃金表を廃止することができなかった点などについて不満を持つパイロットもいる。1996年の交渉では、ALPAが、4年間で2%の賃金切り下げなどを受け入れたため、組合員には不評であった。

協約の正式締結のためには、9800人の同社パイロット組合員の承認を取り付ける必要があるが、5月22日から6月20日にかけての承認投票までは「運航に支障が出ない予定である」とALPAスポークスマンは語っている。しかし投票で承認が得られるかどうか今のところ不明。なお、デルタ航空従業員で組織化されているのはパイロットだけである。

米国で2番目に大きい地域航空会社で、デルタ航空の一部門であるコムエアー社のパイロット労組ALPAの1350人のパイロットは、2001年3月26日以来、5月現在までストを続けており、経営陣との間に給与、手当、その他労働条件など隔たりは大きいまま。同社はストの影響で経営難に陥っており、ストをしていない従業員の一時解雇を発表している。

このほか、全国調停委員会は5月上旬、ストを回避するため、アメリカン航空と同社客室乗務員労組間の交渉進展へ向けての努力を継続している。

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