「不可避的な人口の老齢化」を予測
―INSEEの予測

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年6月

フランスの人口は21世紀半ばにどうなるのだろうか。国立統計経済研究所(INSEE)は3月27日、1999年人口調査の結果に基づく今後半世紀の人口予測を発表したが、その内容は「不可避的な老齢化」と要約できる。

2050年にフランス本国の人口は6400万人となり、2000年よりも500万人増加する。しかし、老齢化が進み、半世紀後は、総人口の35%が60歳以上となる(現在は20%)。すなわち、60歳以上人口は2240万人となり、2000年時点よりも85%増加する。一方、2000年に1500万人を超えている20歳未満人口は2050年に1280万人に減少する。総人口に占めるその割合は現在の25%から20%へ低下する。報告書を執筆したシャンタル・ブリュテル氏によると、高齢者グループの人口増加が顕著で、2050年までに75歳以上人口は3倍に、85歳以上人口は4倍に増加するという。

2011年には、20歳未満人口が60歳以上人口を下回る。60歳以上人口は2035年に人口の3分の1に達する。この老齢化が緩和されるのは、人口の少ない世代が高齢に到達し、第1次ベビーブームの死亡者数が増加した場合だけだ。すなわち、2025年から2040年にかけて、1945~1975年に生まれたベビーブーム世代が老年期に達する影響で、死亡者数が大幅に増加する(年間60万人から70万人へ)。

合計特殊出生率が女性1人あたり約1.8人という25年前からの平均水準に維持されると仮定した場合、2036年以降、年間出生数は年間死亡者数を下回ることになる。総人口が6450万人のピークを越えた後の2040年以降、フランス本土の人口は減少し始め、出生者数に対する死亡者数の超過数を補うのに、移民超過数(年間5万人)ではもはや十分でなくなる。労働年齢人口も、20歳から59歳と定義した場合は2007年に、20歳から64歳と定義した場合でも2012年に減少へ転じる。引退年齢を65歳とした場合でも、「高齢者/労働年齢人口」の比率は現在の274/1000から575/1000へ、50年間で2倍になる。

「範囲を定めることが最も難しいパラメータ」である移民超過数は50年の間現在の水準である年間5万人に固定された。しかし、INSEEの研究者たちは、2005年以降この数字を2倍の10万人にして、別の仮説についても検討した。だが、この場合もほとんど何も変わらない。35.1%の60歳以上人口が34.9%となるだけだ。ベビーブーマーの総数が大きいので、移民超過数が2倍になっても影響は大きくならない。1995年に経済協力開発機構(OECD)の報告書は、フランスがその老齢化プロセスを大きく変えるには2010年から2020年の間に1100万人の移民を受け入れる必要があると指摘していた。

INSEEのさまざまな予測は平均寿命の伸びが現在と同じ割合で続くとの仮定に基づいている。INSEEによると、2035年に平均寿命は男性が82歳、女性が89歳になる(現在はそれぞれ75歳と83歳)。しかし、過去の結果から今後の寿命を正確に予測することはできない。国立人口研究所(INED)の研究によると、女性の平均寿命は伸びが緩慢になって、年間数週間程度にとどまるので、2030年時点では85歳程度と予測されている。そうなれば、INSEEが予測している人口構造の推移は緩和されることになる。だが、死亡率が現行水準にとどまるとしても、60歳以上人口は2050年までに42%増加する。

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