創出された雇用の多くは低賃金職
―政府は最賃改定に慎重

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年6月

国立統計経済研究所(INSEE)が先ごろ発表した「家計の所得と資産に関する年次調査」によると、経済が成長し、150万人の雇用創出があったにも関わらず、貧困率は1996年1月から2000年5月にかけて横這いだった。2000年も1996年と同様、7.3%の家計が貧困線(注1)以下の生活を送っており、合計420万人が貧しさに苦しんでいるという。25歳未満の若者たちを対象にした場合は、この比率がさらに高くなる。

それでは、首相がいつも主張しているように、雇用は所得再分配の中心的な手段ではないのだろうか。雇用は欠かすことのできないその条件であるとしても、必ずしも十分な条件でないことは明らかだ。すべては創出された雇用の内容とその賃金に依存する。

ジョスパン政権が誕生して以降の展開はまさに驚きであった。フランスは2000年に雇用創出の記録をつくったが、かつてこれほどの雇用が創出された時期はなかった。失業者は3年半で100万人以上も減少した。しかし、創出された仕事の多くが低賃金職だった。営利部門で創出された雇用のほとんどすべては最低賃金(SMIC)の1.3倍(7400フラン)(1フラン=15.8円)を下回る賃金しか受け取ることができなかった。そして、SMICの1.3倍弱のを賃金がフランス全体では40%を占めている。

このために、政府は雇用手当(注2)を通して労働所得を増加させるために400億フランの支出を決定した。そして、7月の年次改定でSMICをどれだけ引き上げるのかについても検討されている。週35時間制が導入されて39時間分の賃金が支払われているため、SMIC改定の基準となる労働者の時間賃金率は大幅に上昇しており、機械的に算定された場合、7月1日の引き上げ率は最低でも3%になる。1997年以降、SMICはすでに10.8%、購買力は7%上昇しており、他の労働者のそれを上回っている。

その上、財務省によると、非熟練労働者の雇用は労働コストと強い関係があり、その上昇は雇用に悪影響があるという。また、週35時間制によって導入された二重SMICシステムが廃止される2005年まで、月額SMICも自動的に引き上げられる。こうした事情を踏まえ、ジョスパン首相は今年の年次SMIC改定にまだ慎重な姿勢を崩していない。

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