パートタイム労働者及び有期雇用契約に関する法律

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年5月

「パートタイム労働及び有期雇用契約に関する法律案」が2000年12月21日、連邦参議院で可決され、同法は2001年1月1日から施行されている。

本法は、EUのパートタイム支援に関する枠組協定を国内法制化したもの。これによって育児や介護など労働者個々人の都合に合わせたパートタイム労働への転換とその後のフルタイム労働への復帰が容易になるとともに、ワークシェアリングが進むことによって雇用が増加する等のメリットがあると、連邦労働社会省は強調している。

ドイツ労働組合連盟(DGB)等の労働組合は、客観的理由のない有期雇用契約をすべて禁止するよう要求してきた経緯から、規制が不十分であり、依然として期間の定めのない雇用契約が有期雇用契約に置き換えられていくおそれがあるとしているが、パートタイム労働への転換請求権を規定したことについては、高く評価している。

一方、ドイツ使用者団体連盟(BDA)等の使用者団体は、広範な請求権による労働裁判の増加を懸念するとともに、この法律は企業の中・長期的な人事管理政策を著しく困難にするだけでなく、雇用を阻害し、労働市場の活況に悪影響を及ぼすものであると批判している。

同法の概要は以下の通り。

法律の概要

パートタイム労働〈Teilzeitarbeit)

  1. パートタイム労働者は、フルタイム労働者と比較して正当な理由なく不利に取り扱われることがあってはならない。(差別禁止)(第4条第1項)
  2. 6か月以上勤務しているフルタイム労働者が、労働契約上の労働時間を短縮したい場合には、使用者に対して請求す月前に行わなければならない。(第8条第1項、第2項)
  3. 使用者は、請求された労働時間短縮について合意に達するために労働者と協議(eroertern)しなければならない。使用者は、労働者と協調して労働時間の配分を具体化しなければならない。(第8条3項)
  4. 使用者は、経営上の特別な理由が存在しない限り、労働時間の短縮に同意し、労働者の要望に沿った労働時間の配分を決定しなければならない。使用者は、企業の組織、営業活動、安全性に著しい影響を与えたり過度に多大な経費を必要とするなどの経営上の特別な理由が存在する場合には、労働時間の短縮を拒否することができる。この拒否理由は、労働協約によって定めることができる。(第8条第4項)
  5. 使用者は、労働時間短縮の決定、労働時間の配分について、少なくとも希望時期の1か月前までに書面で労働者に対して通知しなければならない。(第8条第5項)
  6. 使用者が労働者の請求を拒否する場合は、少なくとも希望時期の1か月前までに書面で労働者に対して通知しなければならない。通知が行われない場合は、労働者の要望どおりに労働時間の配分が決定されたものとみなされる。
  7. 使用者は、労働時間の短縮が行われた場合であっても、経営上の不利益が著しく大きい場合には、少なくとも1か月前に通知することによって、労働時間の配分を再度変更することができる。(第8条第5項)
  8. 労働者は、前の労働時間の短縮が行われた時点又は使用者によって拒否された時点から2年経過した後は、新たな労働時間短縮の請求を行うことができる。(第8条第6項)
  9. 労働時間短縮の請求書は、労働者あ(職業訓練生を除く)が15人未満の使用者(小規模)に対しては、適用されない。(第8条7項)
  10. 使用者は、パートタイム労働者が労働時間を延長したい場合には、同様の適正・能力を要する空きポストに配置させることを考慮しなければならない。
  11. 使用者は、パートタイム労働者が職務能力や配置転換の柔軟性を高めるために教育訓練、再訓練を受けることができるように配慮しなければならない。(第10条)
  12. 使用者は、パートタイムがパートタイム労働にも適している場合には、パートタイム労働ポストとしても募集しなければならない。(第7条第1項)
  13. 使用者は、労働者が労働時間を変更したい場合には、空きポストに関して情報を提供しなければならない。(第7条第2項)

有期雇用契約〈Befristete Arbeitsvertraege)

  1. 雇用契約に期限を付することは、客観的理由が存在する場合には許容される。客観的理由としては、一時的・季節的労務、労働者の職務転換のための訓練・教育、代替要員、特定任務のための雇用、試用期間、期間限定の公的資金による雇用等が掲げられている。(第14条第1項)
  2. 客観的理由が存在しない場合に有期雇用契約を締結することは、2年間までの契約は許容され、また2年間に契約を3回まで更新することが可能である。ただし、この有期雇用契約は新規の雇入れ契約に限り可能であり、前の有期雇用契約又は期間の定めのない雇用契約に接続して、客観的理由のない有期雇用契約を締結することは禁止される。労働協約によって異なった更新回数、最長契約期間を定めることができる。(第14条2項)
  3. 58歳以上の労働者とは、前の期間の定めのない契約と6か月未満の間隔しかない場合を除き、制限なしに客観的理由のない有期雇用契約を締結することができる。(第14条第3項)
  4. 有期雇用契約は、効力発生のためには書面の形式によることが必要である。(第14条第4項)
  5. 使用者は、空きポストが有期雇用契約にも適している場合には、有期雇用契約の労働者に対して情報を提供しなければならない。(第18条)
  6. 使用者は、有期雇用契約の労働者が職務能力や配置転換の柔軟性を高めるために教育訓練、再訓練を受けることができるように配慮しなければならない。(第19条)
  7. 使用者は、有期雇用契約の労働者の数とその全労働者に占める割合に関して労働者代表に情報を提供しなければならない。(第20条)

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