貧困削減計画で、雇用・職業訓練を重視

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年4月

グエン・ルオン・チャオ副労働大臣によると、政府は、貧困状態にある家計の比率を2000年の17%から2001年には15%に削減することを目標にしている。また、農業・農村開発省によれば、政府は、2005年までに慢性的に飢餓状態にある人をなくし、2010年までに貧困家計の比率を5%に低下させようとしている。

貧困者数を算定する際に用いられる貧困線は、2001年より、都市部で月収15万ドン、農村部で月収10万ドン、山岳地域で月収8万ドンに設定された。これらの貧困線は、従来の貧困線の約1.5倍の水準である。貧困線が高い水準に改められたため、貧困線を下回る家計は、170万家計(総人口の11%)から270万家計(17%)に増加した。

ベトナムは、国際機関から、貧困問題への対処について高い評価を受けているが、課題は多い。たとえば、世界銀行によると、農村部では、農民の平均的な耕作面積が小さいうえ、農業技術指導を十分に受けておらず、インフラや資金に恵まれていない。貧困者の5分の4は農民である。農産物は国内総生産(GDP)の約4分の1を占め、農業部門に雇用されている労働者の比率は約66%である。

政府は、自然災害対策を充実させ、農業部門での生産性向上をはかり、製造・サービス部門での雇用創出を約束した。農村部の貧困をなくすために政府は、農民に対して生産手段や運営資金の援助を行う。政府が生産物を買い上げるほか、志気を高めるため、新聞閲覧などができる文化施設の設置を農村部で進めていく。

グエン・ルオン・チャオ副労働大臣は、政府目標として、2001年に全国で140万職を創出し、84万人に長・短期の職業訓練機会を与えることをあげている。同副大臣は、貧困削減への取り組みの一環として、労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)が多くの新たな施策を準備していることを明らかにした。まず、社会保険法草案は、すべての労働者を社会保険に強制加入させることを目指している。現在、国有企業労働者の8割から9割が社会保険制度に加入している一方、民間企業や外国投資企業の労働者の場合、加入者は5%から10%だけである。草案はまた、労働者の保険料率5%、使用者の拠出が15%である現在の保険料をそれぞれ8.5%、17.5%に上げようとしている。

雇用創出計画については、労働市場情報ネットワークを構築し、その運営能力を職員に身につけさせるなど、労働市場の機能が向上するように努める。さらに、学生に対し、労働需要の多い専門分野(ITなど)を学習する動機を与えることも検討されている。

労働者海外派遣については、職業訓練や外国語訓練をより効果的に行い、労働者がより容易に資金の借り入れをできるようにする。このほか、社会悪や売春をなくすための法令も検討されている。

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