外資系企業で依然高い高技能労働者採用意欲

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年4月

外国投資企業や合弁企業の多くは、高技能労働者を採用する意欲を持っているが、それらの企業が必要とする技能水準を持つベトナム人労働者は、多くない。ホーチミン市のヘッドハンティング会社、ネット・ヴィエット社の部長によると、ある外国投資企業が12人のIT技術者を募集していたが、2カ月経っても、ネット・ヴィエット社は、適格な候補者を6人しか紹介できなかった。その大きな理由の一つは、ベトナム人労働者が外国語の会話力や意思疎通能力に欠けていることである。外国投資企業は、ベトナム人労働者に会話能力を身につけさせるための再教育を行う必要があり、職務経験のない労働者の場合、英会話能力習得まで約8カ月かかってしまう。そのため、ネット・ヴィエット社に求人を依頼する、多くの外国投資企業は、職務経験のある労働者を求めている。

同様に、シンガポールを本拠地とするエーステック社は、2000年7月以来、ホーチミン市の雇用サービスセンターに、月給1200ドルで雇用される200人のIT技術者を募集しているが、適格な労働者はこれまでに30人しかいない。米国のコンサルタント会社、プライス・ウォーターハウス・クーパース社によると、ホーチミン市では、機械工学エンジニア、コンピュータ・プログラマー、経営管理者などの人材が深刻に不足している。

国有企業と農村部からの頭脳流出

最も優秀な大卒者が、外国投資企業や、国有企業および民間企業の成功している企業に集中すると伝えられている。その一方で、農村部出身の大学生が故郷に戻って就職しようとしないため、農村部では、都市部よりも一層、高技能労働者が不足している。この傾向は、将来、一層明確になると政府関係者は警告している。

ハノイ市の南90キロに位置する、ナムディン省のチャン・チュン・アム人民委員会委員長によると、同省が提供できる最高の待遇を示しても、ナムディン省からハノイ市の大学に進学した学生を労働者として呼び戻すことは難しい。同委員長は、ナムディン省で働く国家関係機関の職員が退職した時に、若くて有能な労働者を補充できないのではないかと懸念している。たとえば、地方政府は、新卒者に月22万ドンの給料しか払うことができないので、IT技術者を採用することは、ほとんど不可能である。

ベトナム郵便通信公社(VNPT)のドー・チュン・タ取締役会会長も、最も深刻な問題になっているのは、ハイテク産業の国有企業からの頭脳流出であると考えている。同会長によると、若く有能な従業員の中で、VNPTを去り、外国投資企業へ移ったり、留学後の海外の会社に移る人が、年々増加している。VNPT傘下のソフトウェア開発会社のグエン・アン・トゥアン部長によると、ソフトウエアのプログラマーを確保するには、月に最低200万ドン(137ドル)の給料を払う必要があるが、同社では、給料として、この金額を支払うことができない。ただし、国有企業では長期雇用をしてもらえると考え、国有企業に魅力を感じる学生もある。

計画投資省の推計によれば、外国投資企業で働くベトナム人は約30万人いる。そして、外国投資企業で働く労働者の給料は、年平均約20%上昇と、他の部門よりも高い伸びを見せている。

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