マイクロソフト社に対する人種上の雇用差別訴訟

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年4月

7人のアフリカ系現・元マイクロソフト社従業員が2001年1月3日、ワシントン特別区 の連邦地方裁判所に、同社が人種を理由に人事考課、昇進、報酬で不利な扱いをしたとする雇用差別訴訟を起こした。さらに原告は、同社が正当な理由なく、何人かのアフリカ系従業員を解雇したとし、この訴訟が、何百人もの同社アフリカ系従業員の集団代表訴訟として扱われるように求め、賠償金として少なくとも50億ドル(1ドル=123.25円)を要求している。原告側の弁護士は、人種上の雇用差別訴訟で、コカ・コーラ社から多額の賠 償金を勝ち取ったウィリー・ゲーリー氏らである。マイクロソフト社は、告発内容を否定しており、裁判の前に詳細を話すことはできないとしている。

2000年には、ソフトウエアを軍に販売する部署を率いていたラーン・ジョンソン氏が、マイクロソフト社を雇用差別で訴えている。同氏の訴えによれば、人事考課で良い成績を得ていたにもかかわらず、同氏が与えられるべき昇進の機会を次々に社内や社外の白人従業員に奪われた。同氏は、ワシントン特別区の連邦地裁に提訴した後、サン・マイクロシステムズ社に移っている。マイクロソフト社のような多くの企業で、先任権が重視されず、 管理者が人事考課を行い、それに基づいて人事やストック・オプションの付与が決められ、若い人でも良い待遇を受けている。ジョンソン氏は、その人事考課が主観的であるために、管理者が人種、年齢、性別により差別する余地があることを問題にしている。また、スリム化された組織によくみられるように、マイクロソフト社では、下級職員が上級経営陣と 直接意思疎通を行っている。ジョンソン氏は、その結果、同氏のような中間管理職が無視され、指揮系統から実質上、阻害されたと主張している。

今回提訴した7人も、ジョンソン氏が主張したように、スリム化された組織で頻繁にみ られる人事や指揮系統のおかげで、マイクロソフト社では、人種による差別が日常的に行われていたと主張している。

これらの訴訟は、効率を高めるとされる、スリム化された組織や、そこでの能力主義の人事を問題にしている点で注目され、同様な組織形態を持つハイテク企業を相手どった訴訟が続発する可能性がある。顧客のシリコンバレー企業に対し、一時解雇計画を作成しているフォックス弁護士によると、ハイテク企業で人員削減が続けば、必然的に、解雇された従業員が訴訟を起こすことになる。ただし、シリコンバレーでは、アフリカ系従業員は少ないため、解雇された40歳以上の白人男性が、年齢差別訴訟を起こすことになろうとフォックス弁護士は予想する。

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