フォルクスワーゲン社、事業所年金を改革

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年3月

ドイツの自動車大手コンツェルンのフォルクス・ワーゲン(VW)社は、現在進んでいる連邦政府の年金改革も踏まえ(リースター労相の年金改革法案(本誌2000年11月号参照)は、与野党、労使のホットな議論を踏まえて一部が修正され、2001年初めに修正法案が発表されることになった)、2001年度から同社の事業所年金を根本的に改革することを決定した。

新しい事業所年金では、従来の積立方式と異なり、従業員の掛け金を年金基金に投資する方式が取られることになり、この基金を「VW年金トラスト」が受託者として運営し、かつ従業員の代表もこの基金の運営に参画できることになる。この新モデルは、すべての従業員に適用されることになるが、50歳以上の従業員には従来の事業所年金の積立方式が認められる。

事業所年金を改革する理由として、VW社の人事担当のペーター・ハルツ氏は、以下のような理由を挙げている。

  1. 経費の節減が必要である。従来の事業所年金では、会社側は年間15~20億マルク(1マルク=53.61円)を支出しているが、事業所年金利用者数は2030年には現在の7万人から10万人に増えると予測される。そこでこの財源をどうするかが中期的には問題になるが、基金に投資してこれを運営すれば、運営利益が出ることから、会社の出費は約半分に押えられる。
  2. 従業員にも基金運営のほうが有利になる。1993年のVW社は経営危機の時、事業所年金の支給額は上げられなかったが、基金運営の収益はより確実である。過去の経験から年間10%の利子を見込め、3%は確実に保証できる。

これと類似する事業所年金は、ダイムラー・クライスラー社でもすでに導入されており、また、他の自動車大手BMW社でも、VW社と比較可能な事業所年金制度が導入されている。この意味でもVW社の今回の決定は、ドイツを代表する自動車産業の新たな試みとして、他の産業部門への影響という点からも注目される。

ちなみにVW社では、2001年初めにこの新しい事業所年金について、事業所協定の成立を見込んでいる。

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