社会保障相、公営保険の不正に密告制度を設ける

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年3月

12月10日ヴァルデッキ・オルネラス社会保障相は、全国に横行するデスパッシャンテと称する官庁手続代行業者により、国の公営保険制度と保険加入者が大損害を被っているとして、「これは、国の社会保険を荒らす害虫で、INPSの非能率が原因である」と述べた。

ブラジルでは、労働者は雇用されたときと、解雇または辞職したときに労働手帳と称する政府発行の手帳に登録し、社会保険負担金の支払日とその額を記入することになっており、これが労働者の権利を証明する基礎データとなっている。

労働者が定年退職するときも、この資料に基づいて年金が支給されるから、労働手帳の記載を偽造し、INPSの職員と組めばたやすく年金が支給されることになる。INPSは、労働者の個人別の記録を有しておらず、たとえ有していても直ちにこれを利用する態勢になっていないから、不正をチェックすることができない。さらに問題なのは、無知な労働者を欺いて代行業者が年金から不当な利益を得ている場合も多いということである。

これは、労働者または代行業者が国を欺く場合だが、その反対に労働者がこの手帳を紛失した場合は、その労働者は時として年金の受給を断念しなくてはならないこともある。

この場合、INPSは労働者に、時には10社を越える過去に勤務した企業を尋ね、かれこれの時からかくかくの時まで某社で働き、しかじかの賃金を得、これだけの社会保険負担金を払ったことを証明せよと要求するが、保険金は何十人、時には何千人もの労働者を列記した用紙に賃金と社会保険負担金を記載し、合計金額を銀行に納付するだけだから、その中から過去に遡って1人の労働者のために証明書を作成してくれる会社は少ない。労働者は泣き寝入りするか、あるいは労働手帳の記載を偽造するかどちらかである。

上記は、ブラジル人で知らない者はいない事実だが、政府はこのたび、ようやく重い腰をあげた社会保険不正告発電話を全国に設置して不正の告発を奨励、さらに保険から受益するためのオリエンテーションを労働者に行うこととした。この電話による告発は、氏名を明かさなくてもよいことになっている。

しかし、これらの不正は社会保障相も認める通り、公営の社会保険の非能率と制度上の欠陥によるもので(たとえば労働者個別の社会保険負担金の払込記録がない)、密告により摘発される不正はごく一部にとどまるであろう。

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