産業連盟会長が交替

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年2月

ドイツの4大使用者団体の中で、使用者連盟(BDA)と並んで有力な産業連盟(BDI)の会長選挙が2000年11月27日にベルリンで行われ、かねてから退陣を表明していたハンス・オラフ・ヘンケル氏に替わり、ミヒャエル・ロゴフスキー氏が満場一致で選出された。これにより、ロゴフスキー氏は2001年1月1日から正式に会長に就任することになる。

ロゴフスキー氏(61歳)は、J. M. ヴォイト社(機械製造コンツェルン)の社長で、社会的要素を兼ね備えた自由主義者との評価がある。同氏は、就任の抱負を述べるに際して、失業者数の減少に取り組む旨を述べ、特に、シュレーダー首相がかねてから2002年までに失業者数を350万人にまで減らすと宣言しているのに対して、300万人に減らすことが可能であるとし、その前提として、期限付き雇用とパートタイム雇用の自由を大幅に認めることと労働市場のさらなる規制緩和の必要性を強調した。

退任するヘンケル氏は、欧州IBM社長から1995年に BDI会長に就任したが、競争社会と米国型の経営を標榜し、労働コストの削減等も含めてドイツの企業立地条件の改善論争に火を点け、また、ドイツの労使関係を規制する要である産業別労働協約不要論を唱え、賃金・労働時間を企業内で交渉することを主張するなど、従来のドイツの伝統から離れる 発言に及び、BDI内部でも時に波紋を起こした。したがって、IGメタル等の有力産別労組 と対立することはもちろん、ドイツの伝統を重視するフント使用者連盟(BDA)会長とも時に対立した。シュレーダー政権の労働政策の柱にもなっている「雇用のための同盟」についても、しばしば脱退を示唆し、フント会長等の尽力による2000年1月の「雇用のための同盟」の共同声明(本誌2000年4月号)以後、脱退発言を控えるようになったという経緯もある。この意味では、IGメタルのツビッケル委員長と並んで、最近のドイツの労使関係で、その発言が波紋を呼んできたと言える。

これに対してロゴフスキー氏は、産業別労働協約の維持の必要は認めているが、事業所レベルでの決定を強化する方向を主張しており、産別労組側は、協約自治の原則に立ってこれに反対している。また同氏は、「雇用のための同盟」の維持を主張しているが、現在論 議されている経営組織法の改正を同盟の会議で扱うことを要望し、この点からも労組側の反対にあっている。

しかし、ツビッケル IGメタル委員長もヘンケル氏のような対立路線でないことへの期待を表明し、フントBDA会長も関係改善を要望しており、ここからある専門筋は、ロゴフスキー新会長のもとで、スタンスとしては対立色が少なくなるが、個々の政策においては幾つかの局面で労組との対立が予測されるとしている。

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