Verdi参加労組、協約交渉権限をめぐり産別労組と対立

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年1月

サービス業の分野に登場予定の巨大労組Verdi(本誌2000年2月号参照)の設立を2001年3月に控え、Verdi参加5労組と労働総同盟(DGB)傘下の IGメタル等他の有力産別労組との間で、協約交渉権限をめぐって対立が生じており、また、Verdi参加5労組間でも、協約交渉地区の区分けをめぐって未解決の対立要因を抱えており、設立を間近に控えてこの動向が注目を集めている。

他の産別労組との対立は、Verdi成立後の賃金協約交渉における組合員の利益代表権限をめぐるもので、この対立は、有力産別労組の IGメタルや化学労組(IG BCE)との間で存在するのみならず、Verdiがその傘下に入るナショナル・センターであるDGBとの間でも意見の対立が生じている。

Verdiは、公共部門労組(TV)、職員労組(DAG)、商業・銀行・保険労組(HBV)、郵便労組(DPG)、メディア労組(IG Medien)の5労組が合併して設立されるが、このうちDAGは、第2次大戦後ドイツで労働組合運動が再スタートした時、産業別組合主義とは別の職業別組合主義の立場から設立され、他の産別労組がDGB傘下に入ったのとは異なり、DGBの傘下に入らない別系統の職員層(Angestellte)を組織する組合として設立された。そこで各産業に属する職員層の中には、DAGによって賃金協約交渉で利益代表される者があり、DGB傘下の産別労組において「1事業所、1労組」の原則が支配したのに対して、職員層に関しては1事業所でDAGと産別労組の利益代表の競合が生じることになった。

しかし、DAGがVerdiに統合され、Verdiも新たにDGBの傘下に統合されることになった現在、金属産業、化学産業等に属するDAG所属組合員の利益を、Verdiが代表するのか、それとも IGメタル、IG BCE 等が代表するのかで対立が生じ、特に金属産業、化学産業に属する約4万5000人の職員層をめぐり、Verdi参加5労組と有力産別労組 IGメタル、IG BCE の間で厳しい対立が生じた。またDGBも、Verdiが産別組合として傘下に入る以上、「1事業所、1組合」の原則にしたがって各産業における産別労組が職員層を代表し、DGBの組織的統合を維持することを主張しており、Verdi参加5労組と意見の対立が生じた。

この対立を克服すべく、DGB連邦幹部会会議が10月10日に開かれたが(連邦幹部会では、DAGを除き、すべてのDGB傘下の産別労組委員長が構成員)、対立を埋めるに至らず、新たな会議を11月上旬に開くことになった。

Verdi参加労組の中では最大労組のTVのマイ委員長は、問題はDAGだけのものではなく、Verdi全体の問題であり、Verdiは各産業分野で従来と異なる新たな組合員の利益代表を要求しているのではないとし、しかも金属産業、化学産業には約4万5000人の職員しかいないのに対し、IGメタルだけでも270万人の組合員がいるのだから、Verdiの権限を認めて不都合はないと主張している。DAGも、それによってのみ各産業に属する従来のDAG組合員の賃金協約上の利益が保護されるとしている。これに対して、IGメタルと IG BCE は、Verdiの権限を認めると、将来他の産業領域でも権限を拡大することの認可として利用される可能性があるとして、強く反対している。

もっともVerdiと産別労組間の妥協を探る案がないわけではなく、金属産業、化学産業に属する従来のDAG組合員の協約上の利益を、期限を限ってVerdiに代表させる案がある。ただこれについても、DAGは、期限を2007年とし、この時点で独立したDGBの調停機関に権限帰属の判断を委ねるべきだとするのに対して、IGメタルは、この時点でVerdiの権限が自動的に消滅し、産別労組側に権限が移行すべきだとしている。

他方、Verdi参加5労組間では、将来13の専門領域に別ち、その財政上の権限配分の原則についても合意している(本誌2000年2月号参照)、最大労組TVの協約交渉地区の中でも組合員数の多いノルトライン・ウェストファーレン地区を将来いかにVerdiの地区に区分けするかで、TV内部にも対立がある。このような中で10月23日、5労組によって構成される設立団体の決議で、Verdiの組合規約が可決された。しかし、5労組は、それぞれの特別代議員大会で、各労組の規定に応じ、組合員の75%ないし80%の賛成決議を必要としている。特に最大労組TVでは、マイ委員長の取りまとめの努力と楽観的な見通しにもかかわらず、組合内に反対の声も根強く、成立を危ぶむ見方もあり、その行方が注目されている。

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