5労組合併、サービス業に巨大労組Verdi誕生決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年2月

ドイツでも産業構造の変化に伴い、サービス産業部門で労組の大合併の動きがあり、これに対して使用者側と他の産別労組内部でそれぞれ対応する動きもあったが、1999年11月後半5つの労組が各臨時大会を開催し、2001年春に「統一サービス産業労働組合」(Verdi)に合併することを正式に承認した。労組再編の動きは他にもあり、組合員数の減少、労組の求心力の低下、経済のグローバル化、失業の増大、規模拡大による交渉力強化の意図等が背景にあるが、今後の成長産業であるサービス産業においてドイツ労働総同盟(DGB)の傘下で組織の統一を図り、労働条件について使用者団体側との協約交渉力の強化を図ることに、Verdi結成の重要な狙いがある。

合併する5労組は、公務・運輸・交通労組(TV)、ドイツ職員労組(DAG)、商業・銀行・保険労組(HBV)、郵便労組、メディア労組で、このうちDAGはDGBの傘下に入っていない別系統の労組として第2次大戦後に発足したのだが、50年を経て新たにサービス業部門の産別労組Verdiという形でDGBの傘下に入ることになった。これにより組合員数320万人の先進産業国で世界最大の産別労組が誕生することになり、組合員数では従来ドイツ最大の産別労組として君臨してきたIGメタルの290万人を超えることになった。

Verdiは、1)金融サービス;2)エネルギー供給、廃棄物処理;3)健康、社会サービス、福祉、教会;4)社会保障;5)教育、科学、研究;6)連邦・州;7)市町村;8)芸術・文化、メディア、印刷、産業サービス・製造;9)通信、情報技術、データ処理;10)郵便業務;11)交通;12)商業;13)特殊サービス、の13の専門分野で、サービス産業の労働者・職員の利益を代表することになる。だが、5労組間の利害調整はまだ残っており、特に規模ではTV が158万人で、第2位のDAGの48万人をも大きく上回り、活動地区も他の4労組よりも約170と遙かに多く、これに合わせてVerdiの活動地区を多くすると、13の専門分野が各地区に反映されない可能性があり、この調整がまだ難行している。更に各地区の予算配分等、まだ解決されねばならない問題を残している。

この合併で最も影響を被るのはDAGであり、従来DGB傘下の産別労組と別系統の労組として、職業別組合主義のもとですべての産業部門の職員層を代表するとの建前で独自の協約交渉を行っていたが、新組織の元ではこの独自性を失うことになる。だがロラント・イッセン委員長によると、サービス産業でDAGの組合員数の割合は20%であり、特に急成長する情報通信(IT)部門では10%に過ぎず、これらの部門での5労組の競争関係を終わらせ、生き残りを図るためにはこの選択しかなかったとされる。

この大合併につき、DGBはVerdiが自己の傘下に入る形で労組の再編が進展することを歓迎しているが、他の産別労組は巨大労組Verdiの権限拡大に警戒心を強めている。中でも、従来の最大労組IGメタルと有力労組鉱山・化学・エネルギー労組(IGBCE)は、サービス業の分野にも「各産業内又は各産業に近接するサービス業」と位置付けて強い関心を示し、将来の成長部門である通信、情報技術部門への進出を狙っているが、この部門ではVerdiの利益代表範囲と特に重なることになり、強い警戒心を抱いている。この2有力労組は、既に他の3労組とともにサービス業部門でVerdiに対抗して連帯して行くことを決めているが、このようなVerdiとの対抗関係は、今後更に強くなると予測される。

なお、Verdiの本部所在地は、新首都ベルリンかフランクフルトのいずれかになる予定である。またVerdiの委員長には、イッセンDAG委員長等が年令を理由に勇退を表明しており、ヘルベルト・マイ TF 委員長かマルグレート・メーニヒ・ラーベ HBV 委員長のいずれかが就任する予定である。

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