実質賃金、9.81%減少

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

タイの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年12月

タイの実質賃金が、1997年からの物価の上昇と給与額の据え置き、および引き下げといった要因により、3年間で9.81%も減少していることが明らかになった。

例を挙げると、公務員の給与は、1995年以降上昇しておらず、最低賃金も1998年から1日当たり162バーツ(バンコク首都圏の場合)(1バーツ=2.49円)と変化していない。

民間部門では、多くの企業が人員削減をすすめ、生産性と労働効率を高めようとしている。そのため、給与とボーナスは、多くの産業で現状維持もしくは削減されている。

一方で物価指数は、1997年に118.2、98年には127.8、99年には128.2と上昇し続けている。物価上昇の要因として、バーツ安による輸入財価格の上昇が挙げられる。2000年8月の物価指数は129.8と、1999年から1.24ポイントも上昇している。

このような現象に対して現地のエコノミストは、「人口の大部分の所得が減少していることは、将来の支出と消費動向に大きな影響を及ぼし、ひいては経済回復のペースを遅らせることになるだろう」と、指摘している。

雇用数が少しずつ増加し、貯蓄額も増加してきているが、消費額は伸び悩んでいる。雇用が不安定なために、人々は消費を抑制し、貯蓄に励んでいるためである。実質賃金の下落傾向は、最近の石油価格の上昇およびそれに伴うエネルギー価格の上昇によってさらに強まるものと見られている。

タイ国内の各財の価格変化は、表に示されている通りである。最も基本的な財である食料品の価格は、この3年間農産物価格が低かったために、それほど変化はない。

この発表によって、労働団体の代表者らが全国の最低賃金の値上げ(1日当たり5バーツ程度)を要求してくることは確実であるとみられている。しかし、最賃の値上げは、経済回復という面においても輸出競争力という面でも、センシティブな問題であり、慎重な判断が必要とされるであろう。

タイの物価変化(1997年と2000年9月の比較)

賃金の上昇
  1997年 2000年9月 変化額(バーツ) 変化率(%)
大卒公務員の月給 6360 6360 0 0
大卒銀行員の平均月給 8000 8000 0 0
最低賃金(バーツ/1日あたり) 157 162 5 3.18
 
物とサービスの価格
食品
米15kg 215 238.33 23.33 10.85
豚肉1kg 78 74.37 -3.63 -4.65
1.85 1.85 0 0
加工食品
カレーライス 15 20 5 33.33
麺と豚肉 20 20 0 0
その他
風邪薬(1パック) 5 6 1 20
炭酸飲料水 6 8 2 33.33
学生用ノート 15 15 0 0
新聞 8 8 0 0
セメント(1サック) 78 101.42 23.42 30.02
サービス
電気(1ユニット) 1.35 2.1 0.75 55.55
水道(1m3) 4 9.64 5.64 141
バス運賃 3.5 3.5 0 0

2000年12月 タイの記事一覧

関連情報