企業の雇用は増加しつつも、収入は低下
2000年に入って消費や輸出の増加により、企業の雇用が増加しており、失業者の再就職までの期間も短縮されてきた。
ブラジル地理統計資料院の発表によると、国内企業の雇用は、2000年7月に前年同期比で1.4%増となり、7月の前年同月比の結果としては1990年以来のプラスとなった。また、2000年に入って前年同月比で4カ月連続して増加、2000年7カ月間の合計は、前年同期比で0.1%増となっている。
しかし、7月から国際原油相場の上昇によるインフレ再燃によって、4カ月前から始まった工業の給料回復傾向はすべて停止し、7月の給料支払総額は6月比で1.1%減少、過去12カ月では5%のマイナスとなっている。さらに、その他のマイナス面として、産業別で最も公式雇用の割合の大きかった工業が、1990年に81.5%だった正式契約雇用率を2000年1~8月の平均では64.2%へ下げたことが挙げられる。
サンパウロ州工業連盟の雇用調査局の発表でも、2000年の8カ月間に1万8064人の雇用増加となって、1994年の経済再建計画発令以来最高の増加記録を作るとともに、初めて8カ月連続増加となった。8月は0.11%、1770人増加した。前年同期比で1.13%の増加となる。1~8月に州内雇用がプラスになったことも1994年以来初めてである。
工業生産の増加につれてゆっくりと雇用も回復に入ったが、給料支払総額は、依然後退が止まらない。内国工業連合会の調査でも、全国の工業労働者の7月の実質平均給料は、前年同月比で0.84%低下、サンパウロ州は2%低下した。
2大中央労組では、今年、企業は非常に高い利益を得ており、過去の給料損失分を取り戻すチャンスだとして、共闘作戦により、平均20%のベアを要求している。しかし、産業界では過去2年間の経済低迷と生産コストの上昇のために、利益は大きく低下しており、まだベアを与える条件を持たないと発表している。
労組の平均20%のベア要求は、使用者側から非常識な要求と非難され、労使交渉の開始さえも困難にしており、9月に年間労働契約期限が切れた多くの業種別労組が、一度も労使交渉のテーブルに着けず、対立状態のままになっている。労組は団体交渉を提案しているが、サンパウロ州工業連盟では「家庭訪問セールスマン式」交渉しか受けつけないと発表した。各工場単位で、工場の労働者が使用者のドアを個々に訪問して交渉するように、という表現である。
労組の調査機関であるDIEESEによると、最近、正式契約雇用が増加している。その原因として国家経済の将来に対する企業の信頼感の回復を指摘した。正式雇用は、雇用の安定と収入増加をもたらす。DIEESEの集計によると、8月の非公式雇用の平均給料588レアル(1ドルは約1.80レアル)に対して、正式契約雇用は960レアルとなっている。
ただ、ここでも平均収入はまだ低下中であり、8月は前月比で0.2%、過去12カ月では8%も低下している。労働問題研究家のサンパウロ州カンピーナス大学マルシオ・ポシマン教授は、石油精製、金属、銀行などの強力な組織網を有する労組のベア要求が始まったために、収入低下傾向は徐々に逆転するであろうと予想している。
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