貧困率11.8%に低下

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

5万世帯の家計を対象に2000年3月に実施された国勢調査(調査の対象は1999年の所得)によると、中位所得の上昇が5年間続き(史上最長)、1999年に200万人以上の人々が貧困から脱出した。1999年のインフレ調整後の中位所得は2.7%上昇し、4万800ドルとなった。

貧困線は、1999年に4人家族の場合、1万7029ドルとなっているが、貧困線を下回る所得の人口の比率は、98年の12.7%から11.8%に低下し、1979年以来最低になった。特に65歳以上の人々の貧困率は、記録上最低の9.7%に低下した。ただし、貧困率は、1960年代の高度成長時代を経た1973年時点よりも依然高い水準にある。

調査結果は、好景気の恩恵が幅広い層に及んでいることを示唆している。人種別あるいは民族別のデータをみても、すべてのグループで中位所得が上昇し、貧困率が低下した。特にアフリカ系アメリカ人の貧困率は、記録上最低の23.6%となった。貧困率が最も低いのは白人で、9.8%が貧困状態にある。所得の伸びが著しいのは、最も貧しい5分の1の階層で1999年に5.4%上昇した。これに対し、最も豊かな5分の1の階層の所得は3.9%上昇した。

順調な経済と低失業率が持続しているので、このような結果は予想されたところだが、すべてが順調なわけではない。1998年から99年に、1年を通じてフルタイムで働く男性の実質年間中位労働所得が3万6126ドルから3万6476ドルへと増加(増加は3年連続)したのに対し、フルタイムで働く女性の中位労働所得は2万6324ドルで、1998年からの統計的に有意な増加が認められなかった。そのため、女性と男性との間の労働所得比率は73%から72%に低下した。女性の労働所得が伸びていない理由を国勢調査局は指摘していない。しかし、新たに労働市場に参入した女性労働者の比率が男性の場合よりもかなり高かったことから、外部の経済専門家は、比較的貧しい女性が働き始めたために、女性の中位労働所得が低下したと考えている。また、所得格差は、人種別でも全世帯でも、ほとんど変わらなかった。ワシントンのシンクタンク、エコノミック・ポリシー・インスティチュートのエコノミスト、ラリー・ミッシェル氏は、所得格差は大きいままで、景気の拡大期に通常見られるような所得格差改善が見られず、歴史的にも、また、諸外国に比べても大きいと語る。同氏は、平均的な中流階級の家庭で、過去10年間で労働時間が279時間増加したと指摘している。なお、国勢調査には、100万ドル以上の労働所得、ストック・オプションなどのキャピタル・ゲイン(資産値上がり益)などに関する情報がないため、実際の所得格差は、ここでの数字以上に大きいと考えられる。

子どもは、全人口の26%を占めるが、貧困者の38%を占めている。1999年には121万人の子どもが貧困状態にあり、98年の140万人に比べ減少している。貧困状態が大幅に改善されたのは都市中心部で、貧困者減少の80%が都市中心部でのものであった。

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