H-1Bビザ枠拡大法案、上下両院で可決

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

上下両院は2000年10月3日、高技能外国人技術者へのH-1Bビザ発給枠を拡大する法案を圧倒的多数で可決した。同ビザ枠は今後3年間、現在の年11万5000人から19万5000人へと拡大される。ビザは最長6年間有効である。なお、高等教育機関や非営利研究機関で働く場合には、ビザ枠の人数に含まれない。また、ビザ申請手数料の値上げにより、より多くのアメリカ人がハイテク産業で働くことができるように、教育・訓練支出拡大が賄われることになった。

ハイテク諸産業の要請に応えた同法案は、H-1Bビザ労働者の企業間移動を促進することになる。ハイテク産業は、労働者の企業間移動が激しいことで知られるが、外国人労働者は、雇用主を変えるたびのビザ申請内容更新時に手続き上の問題が生じることを恐れ、転職をためらうことが多かった。従来、移民帰化局が手続きに何週間、あるいは何カ月もかけ、その間、労働者は転職できなかった。しかし、新法により、移民帰化局の手続完了を待たずに、労働者は新しい勤め先で勤務し始めることが可能になる。

最近の会計検査院の報告によれば、平均的なH-1Bビザ取得者は、年収4万5000ドル(1ドル=108.85円)の25歳から29歳のインド人男性である。会計検査院は、H-1Bビザ労働者の給与や労働条件について、連邦当局が十分な情報を持っていないため、労働者が搾取される可能性があると指摘している。しかし、使用者に対し、H-1Bビザ労働者への支払金額を明示した納税書類提出を義務づけることを定めた下院法案の規定は、可決された法案に盛り込まれなかった。

新法の重要な内容の1つは、高技能労働者の多い国からのグリーン・カード(永住許可証書)取得を容易にしたことである。移民帰化局は、各国に毎年1万5000枚というグリーン・カード交付枠を厳格に運用している。そのためH-1Bビザ取得者の半分以上を占めるインド・中国出身者がグリーン・カードを取得することは難しかった。新法では、グリーン・カード交付枠を使い切っていない国で残った人数を、インド・中国といった国に再配分するよう移民帰化局に指示している。H-1Bビザ取得者がグリーン・カード申請中に米国に滞在できる期間も延長された。

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