補償金つき自由解雇制を検討

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

政府、労組および使用者団体は、現在の有期雇用にかわる新しい期間の定めのない雇用契約の導入の検討を始めている。大筋では、解雇に伴って賃金30日×勤続年数分の補償金付きの期間の定めのない雇用の導入であるが、使用者側は賃金12日分×勤続年数、政府は20日×勤続年数を提案している。これは事実上、補償金支払いつきの自由解雇を意味する。現在、賃金労働者の3分の1をしめる有期雇用労働者は、雇用契約期限終了に際し、いかなる補償金も受けとっていない。

なお、この契約形態は、裁判所の指導下にないものとされる。言い換えれば、労働者は解雇に際して裁判所に訴える権利がなく、集団解雇でないかぎり使用者側は、解雇の理由を裁判所に弁明する必要がないことになる。

主要労組は、裁判所の指導は放棄しがたい権利であるとして、警戒を強めている。現状では、期間の定めのない雇用の正当な理由ない解雇に伴う補償金は賃金45日×勤続年数、期間の定めのない雇用創出促進のための特別形態(前政権下で導入、2001年まで)では33日×勤続年数であるが、実際の解雇補償金の平均は、27日×勤続年数となっている。

今期政権の日程は、労組・使用者団体との交渉で目白押しである。1999年に行われた最後の労働市場改革以来、政府は未だに多数のテーマを引きずっており、中でも解雇規制の修正は、最も議論を呼びそうである。

企業の側から見ると、スペインの解雇コストは、他の欧州連合諸国と比べて非常に高く、特に裁判所の介入が認められているため、労働者の解雇に際して予見できない要因が多いという問題が指摘される。

逆に労組は、使用者側が求めている自由解雇(補償金なし、裁判所の指導なし)が実現すれば、労使関係はもっぱら企業の私有地と化し、解雇は企業の恣意だけに基づいて行われ、労働者は自衛手段を奪われると主張している。

新たな提案は、企業側と労働者側の要求の中間に位置し、現状の法定解雇補償金に近い額の補償金を維持しつつ、解雇理由をめぐる裁判所の介入をなくそうというものである。もしこれが実現すれば、期間の定めのない雇用の解雇の解消というテーマは、司法の場面から姿を消すことになる。

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