商店営業時間の延長に対する各界からの批判

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

商店営業時間の自由化政策に対し、小企業は断固反対の態度を示している。各小規模商店組織では、政府の政策は大規模店を利するものであり、小規模店は市場から駆逐され、雇用喪失につながると厳しく批判しており、来る10月10日にロックアウトを構えている。

小売市場における小規模店のシェアに関する議論は、いくつかの信頼のおける研究によって裏づけられる。スペイン流通・セルフサービス・スーパーマーケット連盟の調査は、年間12日の日曜・祝日営業が認められた場合、伝統的な小規模店およびセルフサービス店のシェアは0.8%減り、その分が大規模店およびスーパーマーケットのシェア拡大にまわるだろうとしている。ただし、営業時間の完全自由化が実現した場合、最も痛手を受けるのはスーパーである。すなわち、大規模店舗のシェアは4.8%伸び、スーパーは3.6%減、セルフサービス店と小規模店はそれぞれ0.6%減になると予想されるのである。

しかし、営業時間の自由化によって一番懸念されるのは、雇用喪失の問題である。同じ調査によると、年間12日の日曜・祝日営業にともなう中小規模店の雇用喪失は約3万4000人、さらに営業時間の完全自由化が実現すれば、この倍の雇用喪失が起こると見られる。

一方、営業時間自由化による価格への影響は、期待されているほどのものではないようである。スペイン流通・セルフサービス・スーパーマーケット連盟の調査その他の研究によると、すべての商店が全日曜・祝日に営業した場合、その結果は日曜・祝日の割合に等しい割合(約15%)の可変経費の増となる。すべての店舗が営業するとした場合、コスト増は自由化による売上増だけではカバーしきれないと考えられる。そのため、コストは値上げという形で消費者にはねかえることになり、物価抑制という政府の目的は逆の結果になってしまう。

これに対し政府は、商店営業時間に関する規制が最も緩いマドリッド州が、過去数年インフレが最も低く、かつ安定している州であるとの反論をしている。

今回の自由化に反対しているのは小規模店だけではない。自治州政府の中には、雇用への影響の懸念もさることながら、小売業に関する規制は、国でなく州政府の権限であるとの観点から政府を批判しているものもある。アンダルシア州政府は、政府の導入した商店営業時間新規制を違憲として訴える措置をとった一方、地方民族主義政党が政権をとっているカタルーニャとバスクでも、州内で独自の規制を導入する方向で検討を進めている。

労組は小規模店の立場を支持しているが、これは大規模店舗に象徴される資本主義との戦いの姿勢とも見られる。労組は、新しい規制によって、中小規模の商店・スーパーに見られるより質が高く安定した雇用が減り、かわって大規模店では、祝祭日営業という具体的な必要性だけに対応するため、不安定雇用を増やすだろうと見ている。

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