NLRB、労組による派遣労働者の交渉単位への包括を容認

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

2000年8月30日の決定の中で、全国労働関係局(NLRB)は従来の決定とは異なり、派遣労働者が正規従業員と同様の職務内容をこなしている場合には、派遣労働者を正規従業員の交渉単位に包括してもよいとした。この決定はまた、派遣労働者同士が連帯して、派遣元企業(派遣会社)および派遣先企業と交渉することを認めている。この決定は、ほぼ5年間争われている、ミズーリ州メリーランド・ハイツの M.B. Sturgis社の工場で働く約12人の派遣労働者などに関する2つの紛争について下されたものである。

この決定は、組織化されていない企業には影響を与えないが、組織化されている企業では、派遣労働者に関する労働条件の変更について派遣労働者と団体交渉する必要が生じるかもしれない。この際、派遣先企業は、別個の手当規定などを持つ派遣元企業とともに、派遣労働者と交渉しなければならない場合も出てくるだろう。

1999年には、米国就業者の2.2%が派遣労働者として働いており、1990年の2倍の水準になっている。派遣労働者への需要が爆発的に増えている大きな理由の1つは、派遣労働者が正規従業員と同じ組合に加入することを不可能にしている、1973年のグリーンフット・ルールである。このルールは、派遣労働者が組織化された企業に派遣された場合に、派遣労働者の組織化が許されるのは、派遣元企業と派遣先企業双方の合意のもとで組織化する場合に限られるとし、NLRBの従来の決定もこれにそったものであった。しかし、現実には、このような形で派遣労働者の組織化が許されることは、ほとんどない。

前 NLRB委員長・現スタンフォード大学教授のウイリアム・グールド氏は、グリーンフット・ルールが完全に使用者側に有利なものになっており、派遣労働者の地位を低いものにし、フルタイム従業員が持つ各種の権利が派遣労働者に与えられていないと語る。

派遣業界は、NLRBの決定が、派遣労働者の雇用形態を非弾力的にして派遣労働者への需要を減らしてしまうため、派遣労働者のためにならないとしている。

一方、シアトル市で派遣労働者として3年半働いてきたコンピュータ技術者のエド・ケンプ氏は、派遣労働者が時間給によって働く際に、派遣会社が派遣先から得ている金額について知らされることが重要だと考えている。ケンプ氏は、派遣会社は、派遣労働者の無知につけこんで、うまく利用する傾向があるので、派遣労働者が団結して交渉する必要があると考えており、派遣労働者の組織化を容易にする NLRB決定を歓迎している。

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