新労働組合法、可決される

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

2000年7月10日、国民議会は、新労働組合法案を可決した。今回の労働組合法案の特徴は、官製労働組合である全インドネシア労働組合連合(FSPSI)以外に各種労働団体の設立が認められたという点である。また、公務員も公務員連盟(Korpri)以外での労働団体に属することが認められた。実際には、1997年に労働組織の複数化を認める「労働問題に関する1997年法令第25号」が成立し、2000年10月に施行予定となっていた。

新法案が旧法と異なる点は、組合結成は最低25人が必要であるという規定が10人からとなり(第5条)、労働組合連合は最低5つの労働組合をメンバーとし、労働組合連盟は、最低3つの労働組合連合から成り立つことが規定された(第6条および第7条)ことである。そして、1人の労働者は1企業の1労組にしか属せないことも明記された。

また、第5条第2項に「労働組合は、労働者によるストライキの計画者、実施者、責任者である」と述べられているが、これが明確なストライキ権の保障になっているとは言い難く、各種労働組織やNGOの団体からこの新法案への反対意見も出されている。

さらに、新法案反対の理由として、「結社の自由と団結権の保護」に関するILO条約第87号(1948年)に反することが挙げられている。インドネシアは、1998年にハビビ政権がこのILO条約を批准したが、その内容を法令化するにはいたっていない。ILO条約の第4条には、「労働組織は政府によって解散もしくは結成の延期を命じられることはない」と明記されているが、今回の法案では、労働問題が長期化し、問題の解決が困難な場合には、政府が裁判所を通じて労働組合の解散を命じることができるとされている。すなわち、労働組合の組合員または役員が、組合の名のもとに「国家の治安を冒す犯罪」を行い、禁固5年以上の実刑判決を受けた場合、裁判所はその労組を解散できるとしている(第38条)。

1998年5月のスハルト政権崩壊以来、インドネシアでは労働組織が乱立しており、現在少なくとも60の組織が存在するとみられ、労働者の数は、インフォーマルセクターを除いて約3000万人とみられている。

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