労働時間短縮、国会で検討へ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

全国金属労組連合会は、2000年7月初めに下院議長に対して、憲法に定めた現在の週44時間労働を、給料を下げることなく、少なくとも36時間に短縮する提案を行い、これに対し下院議長は、8月から専門委員会を設置して研究することを約束した。これで時短問題は、ついに国会で議論されることになった。

労組が44時間労働をいきなり36時間へ縮小するよう要求した理由は、カルドーゾ大統領が2000年6月にフランスを訪問してジョスパン首相と会談した際に、フランスが35時間労働を採用したことによってかなりの新規雇用が生まれたことがテーマの一つとなり、その後の記者会見で、質問に答えて「ブラジルでも検討できよう。ただ、生産部門のイニシァチブによるべきだ」と発言したことがある。マスコミはこれを大統領が提案したように報じ、労組は、大統領に対する支持率が低下したこの時期を利用して、政府に圧力をかけるために、思い切った労働時間短縮を提案したのだと、アナリストたちは論評している。

この要求が国会へ提出されたことによって、議論は本格化すると見られる。下院議長はまだ意見をとりまとめていないが、「44時間を36時間に短縮する要求は、非常に厳しすぎると思う。雇用増加が目的であれば、その中間をとって40時間あたりを研究するほうが適切だろう」と述べた。

ブラジルでは、達成不可能と分かっていても、最初は大きく吹っかけて、次第に妥当な線に近づけて、譲歩したと主張することが慣習になっている。全国金属労組は、労働党系の中央労組CUTに所属しているために、時短要求の提案に労働党が協力しており、労働党の研究によると、現在国内の労働者は、年間2700万時間の超過勤務を行っており、週40時間労働にすれば300万人の新規雇用ができる。労働党は、給料は下げないで、週30時間労働が適当だと主張しており、ここまで下げると1200万人の新規雇用ができると発表した。労働党のこうした計算は、グローバル化された生産部門に、30時間労働を採用した場合のコスト上昇、国際競争力の低下、外資系企業の反応などは全く考慮せず、単純に数字だけを計算した政治目的の発表であり、労働党からはこの種の発表がいつも出てくる。

もう一つの中央労組であるフォルサ・シンジカルも、2000年7月に週40時間労働を要求して、主要工業地帯の一部企業を作戦的標的に、散発ストを行っており、7月中に、従業員1万400人を抱える12社の企業と、徐々に週40時間労働へ縮減していく約束を取りつけたと発表した。サービス部門では、週40時間労働となっているが、工業部門では通常1日8時間、土曜日4時間が最低条件になっており、将来の時短採用を約束した企業も、2001年3月までとか、2002年9月までに達成するとして、猶予期間を求めている。

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