好転が見られる雇用・失業情勢

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

ブラジルの記事一覧

  • 国別労働トピック:2000年10月

雇用が連続して増加

労働省は「雇用・失業総登録」をもとに、2000年5月には16万2847人の新規雇用が生まれたと発表した。このうち50.6%に当たる8万2398人は農業就労者である。集計に当たった労働省の技官は、農業部門の雇用増は、マクロ経済の好転が影響していると分析した。また、5月の結果で目立つことは、雇用削減の代表部門とされていた製造業が、5月だけで4万2442人の新規雇用を創出させていることであり、商業の1万4920人、サービス業の1万9526人を大きく上回っている。

サンパウロ州工業連盟の発表でも、2000年に入って工業部門の雇用は増加しており、6月は5月より0.16%、2540人増加した。1994年7月に経済安定計画であるレアル計画が発令されて以来初めて、サンパウロ州の工業は、今年上半期連続雇用増を記録し、合わせて1万5000人増加した。1996年以来初めて、上半期の採用者が解雇者を上回った。

サンパウロ州工業連盟の理事は、「継続的に増加しているものの、今後大きな増加は期待できない。企業は、生産を増やす初期段階は超過勤務で対応するからである。経済が長期成長の段階に入って初めて新規投資を考え、労働者の採用を開始するのはその後になる」と説明した。サンパウロ州立データ処理財団の発表では、サンパウロ首都圏の正式雇用契約した労働者は1999年6月に40%が超過勤務をしていたが、2000年6月は44%へ上昇した。これは、企業が需要増に対して、新規雇用よりも超過勤務によってカバーしていることを裏づけている。

非公式就労の増加が雇用増の原因

サンパウロ州立データ処理財団と労組の研究機関DIEESEの共同研究によると、1999年下半期から始まった経済回復によって、サンパウロ首都圏だけで、2000年6月までの過去12カ月間に20万7000人の新規雇用が創出されたが、まだ雇用の質を上昇させるには十分ではない。新規雇用は一般に不安定な職と、低い給料、非公式就労の組合せからなっており、過去12カ月間の公式就労の1.8%増加に対して、非公式就労は15%増加した。公式契約就労の平均給料903レアル(1ドルは約1.8レアル)に対して、非公式就労の平均給料は579レアルとなっており、非公式就労の置かれた状況を如実に明らかにしている。

解雇一方であった工業部門は最近、雇用増加で注目され始めており、最も正式雇用の多い部門であるが、それでも過去12カ月間で非公式採用が6.9%増に対して、正式雇用は0.2%増にとどまっている。商業部門ではこの指数が11.8%対0.6%、サービス部門は17.0%対2.2%の差となっている。

ブラジル地理統計資料院のデータも、この傾向が全国で起こっていることを示している。同資料院が6大首都圏で行った調査によると、2000年1~5月に、30万8000人の新規雇用が創出されたが、正式雇用は6万1000人にとどまっている。

最近は非公式ながら、失業者で組織している労働者供給組合と下請けの形で雇用を契約する形式が増加していると、資料院は発表している。サンパウロ大学の労働問題研究者によると、1999年には、企業の7%がこの組合と契約していたが、2000年5月には14%となった。非公式人材派遣会社が組合の名称を利用している例もあるが、労働省と社会保障院が十分な監督能力を持っていないために、非合法でありながら、企業は下請けとして利用している。

現在のように、高い失業期間が長期にわたって続くと、失業者はいかなる条件でも仕事を受入れるようになる。政府の監督機関としては非合法をとりしまる能力はなく、したがって正常化は、経済回復によって雇用が増加し、労働者が職を選べるような時代がくるまで待つしかない状態である。労働者の中にも、正式雇用になると最低でも給料の8%を差し引かれるために、低額所得クラスでは8%の納付金を逃れようと、非公式就労を好む者もいる。

失業率7.4%へ

ブラジル地理統計資料院は、2000年5月の公式完全失業率7.8%が6月は7.4%へと、わずかながら減少を見たと発表した。1999年6月は7.8%、2000年上半期の平均も7.8%、99年と98年の上半期も7.8%だった。経済回復と雇用の増加を見越して、多くの潜在失業者が職探しに出たことが失業率の低下を困難にしていると資料院は説明している。

公式失業調査は、失業していても調査した週に求職行動を実際に取っていないかぎり、失業者として計算しない。5月の失業者の再就職までの平均失業期間は19.6週間、6月は19.7週。1999年6月は24.7週だったので、これは就職チャンスが増加したことを証明している。6月時点での就労人口は過去12カ月間に3.9%増、約65万人の増加と発表した。平均収入は5月までの計算になっているが、前年同期比にして自営業は1.2%の増加、しかし正式契約労働者は1.2%の後退、非公式労働者は変化なしとなっており、就労者の所得は低下気味に推移している。

関連情報