インターネット・ブーム冷却で解雇された労働者の現状

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

2000年3月に始まったインターネット関連株価下落によって、いわゆるドットコム企業のいくつかの業績に、先行き不安が生じ、インターネット関連なら必ず成功するという安易な期待が崩れた。ドットコム企業で働くことを希望していた多くの MBA(経営学修士)の学生も、ベンチャー企業の中でも、現金収支(キャッシュ・フロー)に困らないよう明確な事業計画を持つ会社を見分けることが大切であることを再認識し、経営コンサルティングや投資銀行のように、現金収支が問題になりにくい産業に人気が移っている。さらに、インターネット関連のベンチャー企業を起こそうとしていた人々は、計画の変更を余儀なくされた。ところで、事業計画の見直しで一時解雇された労働者はどうしているのだろうか。西海岸と東海岸地域に分けて見てみよう。

西海岸

サンフランシスコやシリコンバレーでは、多くのインターネット関連企業が縮小、統合、撤退したが、地域経済は好調である。インターネット関連企業からの失業者はほとんど、ほぼ順調に新たな職を見つけている。例えば、カリフォルニア州ノバトのオンライン・ソフトウエア製造会社から解雇された販売管理部門の34歳の男性は、1カ月もしないうちに15社のインタビューを受け、前職同様の報酬を得られそうな感触を得ている。また、ソフトウエア製造会社での販売管理の経験を持つマッキネス氏は、2000年4月に初の株式公開を目前にしたブライトウエア社に入社した。しかし、同社は、インターネット関連株価の下落により株式公開の機会を失い、マッキネス氏は6月19日、一時解雇者35人(従業員数175人)の1人となった。マッキネス氏が履歴書を7月4日にインターネット上に出したところ、翌日から約10日間に50社近くの誘いを受け、2000年4月に就職活動をした時よりも、求人が多いと感じている。

ただし、サンフランシスコでも、以前よりも報酬や待遇が下がったり、予想以上に長い間、就職活動を続けなければならない人もいる。プリミア・スタッフィング社でリクルーターをしているキャリー・パークス氏によれば、2、3カ月前に1時間200ドル(1ドル=107.25円)を得ていた Java(コンピュータ言語)のプログラマーは、現在1時間100ドルあるいは150ドルしか得ることができない。しかし、同社のサラ・メンケ社長によると、求人数が求職数を上回っており、転職者は自分の解雇経験をふまえ、資金調達や経営者の経営経験などを求人先から尋ねるようになっているという。

サンフランシスコの臨海地域では、在来型の技術関連産業や金融業が順調で、2000年6月だけで1万職以上が創出され、インターネット関連企業での雇用破壊を上回った。多くのシリコンバレーの大企業がアジア経済危機からの回復途上にあった1年前に比べても、遜色ない地域経済拡大が続いている。ただし、インターネット百万長者の数が減ったことから、高騰していた不動産価格が少し下がりだした。インターネット関連株の低迷が続けば、このような影響は、さらに広がると考えられている。

東海岸

これに対し、特に東海岸地域でインターネット関連企業から解雇された人々は、予想以上に長期間失業していることが多い。あるインターネット関連企業から一時解雇され、他のインターネット関連企業への就職を希望しているニューヨークの27歳の女性は、インターネット・サイトでの求職や二次面接を数多く行っているが、6カ月間就職先が見つからず、2000年5月になってインターネット・ウェブサイト上でナイトクラブのリストを編集する仕事に就いた。

サンフランシスコに位置するラッセル・レイノルズ・アソーシエイツでリクルーターをしているジェニファー・フリン氏によると、インターネット関連企業は生き残りをかけ、収益改善に関心を持っている。多くのリクルーターによれば、求められる技能の選別が進行中である。高度な技能を持つ人への需要は安定しており、上級経営陣として働いた経験を持つ人への需要は急激に増えている。しかし、情報コンテンツやマーケティング担当といったスペシャリストへの需要は落ちこんでいる。そのため、失業を経験した人々は、求人先に対し、自分をどのように売り込むか考え直さなければならない。またインターネット関連企業の中には、スードー・プログラム社やヴェーシティ・グループ社のように、再就職斡旋サービスを利用して、自社の一時解雇者の受け入れ先を熱心に探している企業もある。

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