NLRB、非組合員にも懲戒ヒアリングに同僚の立ち会いを認める

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年10月

全国労働関係局(NLRB)は、2000年7月10日、エピレプシー財団対ボルグ・ハサン事件で、これまで組合員にのみ認められていた、懲戒ヒアリングで使用者と話し合う際に、同僚の立ち会いを求める権利を非組合員にまで拡大した。このNLRBの決定は、同件について行政法審判官が下した決定を覆すものである。エピレプシー財団は、てんかんの症状を持つ人々に対し職業訓練を行う、クリーブランドを本拠とする非営利団体である。NLRBによれば、従業員のアーニス・ボルグ氏とアシュラフル・ハサン氏が彼らの上司たちと対立し、使用者がボルグ氏のとった行動について、ボルグ氏の懲戒ヒアリングを行った。ボルグ氏は、このヒアリングにハサン氏も立ち会うことを求めたが拒絶され、その後、ボルグ氏とハサン氏は解雇された。NLRBは、2人を復職させ(ただし、ハサン氏の復職は他の法的根拠に基づいている)遡及賃金を支払うようエピレプシー財団に命じた。今後、エピレプシー財団が上訴する可能性が高いが、その場合には連邦控訴審で争われることになり、決着がつくまでに何カ月あるいは何年という長い時間がかかる。しかし、国内労働者の約85%が組合によって代表されていないため、この決定が合衆国の労使関係に大きな影響をもたらすかどうか未知数で、クリントン政権下でNLRBが下した決定の中で最も重要なものの一つとされる。

懲戒ヒアリングに同僚の立ち会いを求める権利を非組合員へ拡大すべきかどうかについて、NLRBの判断は、これまで何度か揺れ動いてきた。最高裁は、1975年ワインガルテン事件において、従業員が組合役員に自分を懲戒ヒアリングで補佐してくれるよう頼んだ行為を組合の団体行動であると判示した。NLRBは、カーター政権に任命された委員が多数を占めた1982年に、この権利を非組合員にまで広げたが、レーガン政権に任命された委員が多数派となった1985年には、この考えを撤回していた。ところが今回、クリントン政権が任命した3人のNLRB委員、ジョン・C. ツルースデール、セラ・M. フォックス、ウイルマ・B. リーブマンは、1985年のNLRB決定がワインガルテン事件の判決を誤って解釈していたとした。すなわち、3委員は、ワインガルテン事件では組合役員が関わっていたものの、この件の最高裁判決は、雇用者は相互に扶助と保護を行う権利があるという雇用法の一節に依拠したものであるとし、組合によって代表されていない従業員にも懲戒ヒアリングに同僚の立ち会いを求める権利があるとしたのである。なお今回、反対意見を述べた少数派委員は、組合役員ならば懲戒ヒアリングで労働協約について理解を深める発言をするかもしれないが、単なる同僚であれば、同様の手助けをすることは期待できないと述べている。

使用者は一般に、従業員が同僚を連れて懲戒ヒアリングに来ることを好まず、産業界はNLRBの決定に怒りを感じている。労働組合の弁護を行うスタンリー・アイゼンシュタイン弁護士は、非組合員にまで権利を拡大した今回の決定を賞賛する。アイゼンシュタイン氏によると、この決定は、同僚を同伴させる権利についてよく知らない非組合員自身よりも、彼らを弁護する弁護士にとって大きな意味を持つ。エピレプシー財団の弁護をしているスティーブン・モス氏も、例えば、企業がハラスメント(注・性的いやがらせなどを含む)について事実関係を調べる際に、従業員の同僚が懲戒ヒアリングに出席する場合には、従業員を1人だけ呼んでヒアリングを行う場合よりも、事実解明が企業にとって難しくなるなどの影響があると語っている。

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