最低賃金3.2%引き上げ、政治加算はなし

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

全職業一律スライド制最低賃金(SMIC)は1950年に生まれたが、もはや本来の姿とは違うものになっている。政府による政治加算なしにSMIC自体が引き上げられたばかりか、2つのタイプに分けられたからである。週35時間制のために、今年の最低賃金の動きは特異な形を示しているが、この異常はしばらく続く恐れもある。

SMICの改定は、過去1年間のインフレ率とブルーカラー労働者時間賃金率の購買力上昇分の2分の1が基準になる。今年は、法定引き上げ率に従って計算されただけで、SMICの時間率が7月1日に3.2%も引き上げられる。MEDEFのセリエール会長は6月24日にラジオ・クラシックで、「経済成長があるとしても、非熟練労働者の雇用に好都合だとは言えない」と述べた。

一方、ファビウス経済相は2000年6月26日付のウエスト・フランス紙のインタビューで、「賃上げを享受できる人たちにとってはプラスだろうが、短期的に中小企業が苦境に陥らないように措置を講じる必要がある」と強調している。物価上昇率は低いので、SMICの推移は何よりもブルーカラー労働者の賃金指数に影響を受けている。雇用省のデータによると、この指数は、2000年上半期に2.3%上昇した。週35時間制協約に調印した企業は、おおむね賃金水準を維持しているので、週35時間と週39時間の格差によってSMICの時間率が必然的に上昇する。

矛盾は、得をするのが週39時間制にとどまっている労働者だという点にある。週39時間制の労働者は、手取の時間賃金率が42フラン(1フラン=14.96円)(現行は40.72フラン)となり、月額賃金は、これまでの6881.68フランから7101フランに引き上げられるからである。

一方、週35時間制に移行した労働者の場合、仕組みが全く異なる。と言うのも、労働時間短縮による11.4%分のSMICを引き上げないですむように、オブリ第2法が週35時間制と週39時間制との間の「差額補填」を定めたからである。こちらの保証は「インフレ率+月額賃金率の上昇率」にしたがって改定される。2000年7月1日にその上昇率は1.45%になる。

その結果、時短労働者は、週39時間制の労働者よりも月額で100フランほど少ない賃金を受け取ることになる。「50フラン」の時間賃金率を要求しているCGTはこの不当な不利益を激しく批判している。対照的に、政府にとってこの格差は異常ではない。賃金が変わらないのに、労働時間が4時間も短縮されたからである。

週35時間制が普及するにつれて、2本のSMIC曲線は重なっていくに違いない。ともあれ、政府は2005年までこのSMICに拘束される。

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