生産性上昇を根拠に時短を要求

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

労組の研究機関であるDIEESEのサンパウロ首都圏ABC支部は2000年6月末に、内国工業連合会の資料を基に、1992~2000年4月の工業部門の高い生産性上昇率を算出し、これを根拠に各中央労組は、労使交渉に当たって週当たりの労働時間短縮とベースアップを要求することに決定した。この期間の国内工業の平均生産性上昇率は95%となっており、中央労組では、この8年間に1人の労働者の生産性は約2倍に上昇していながら、企業が支払う給与総額は35%の増加にとどまり、45%の差があると発表した。中央労組の一つであるCUTではこの生産性向上により、労働時間短縮はゆとりを持って実施できると主張し、まず、週44時間労働を40時間に短縮するよう要求する考えである。この短縮で150万人の新規雇用が創出できると計算している。CUTではさらに第二期の要求として、週36時間労働の要求に入ると決定している。

労組のこうした動きに対して、企業は労働時間短縮に全く関心を見せていない。第1の理由は、44時間を40時間に短縮すると、生産コストの上昇から企業支出が増加して新たなインフレ上昇原因になると主張している。企業は、現在の低インフレは長期間ほとんど値上げしていない工業製品の努力によって達成されているとし、生産コストが上昇すればなんらかの形で製品に加算されると指摘する。フランスが雇用増加のための振興策として週35時間労働を採用しながら、週去3年間に115万人以下の新規雇用増加にとどまったことを紹介して、労働時間短縮による雇用増加は、期待するほどの効果を見せないと、労組の提案に反対している。

企業家たちは、現在のブラジルにとって必要なことは、生産性向上と投資の勧誘努力を最大限に発揮して、経済成長と競争力を確保することにあると主張する。東南アジアが国際競争力を獲得した理由は、週48時間に達するような長い労働時間にあると見ている。

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