「100万人雇用目標」達成可能性あり

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

今年中に100万人の雇用を創出する政府の目標は、次第に達成可能性が高まっている。

エコノミスト、アナリストなどは、政府がこの目標を発表した時、単なる政治目的の表明にすぎないとして取り上げもしなかったし、下半期に経済が回復すれば多少の雇用増加は当然見られるくらいにしか考えていなかったが、ブラジル地理統計資料院の発表によると、2000年1「5月に6大首都圏で58万8200人の新規雇用が実現、過去12カ月では82万2000人の増加となる。前年同期と比べて就労人口は、1650万人から1710万人へ増加した。

また、同資料院とは異なった計算方法で雇用を計算するサンパウロ州立データ処理財団と労組のDIEESEの共同研究も同じく、サンパウロ首都圏だけで2000年1~5月に8万2200人の新規雇用が創出されたとし、同様の傾向を示している。過去12カ月では25万7000人の増加となった。

しかし、両調査によれば、雇用の増加に見合ったレベルでの失業の減少は生じていない。雇用者数の増加以上に求職人口が増加して、求人と求職が釣り合わないことについて労働市場の専門家たちは、長期にわたる経済低迷により、多くの失業者が就職を諦めていた後では自然の現象であると指摘している。経済回復傾向を見て、大量の潜在失業者が労働市場に表われ、失業率を上昇させる。それでも2000年は4、5月ともに、1999年、98年同期比で失業率は低下しており、データ処理財団の計算担当者は、下半期にならないと失業率は低下しないと考えていたが、4月から失業率の低下が見られたことに驚きを表明した。1998年5月の同財団調査の失業率18.8%は、2000年5月に18.7%となった。

政府は100万人雇用創出計画の発表に当たり、詳細な雇用の種類や質については述べなかったが、同資料院によると、過去12カ月に見られた82万2000人の新規雇用のうち、正式雇用はわずか7.5%の6万2000人で、約60%に当たる49万2000人は非公式雇用である。その他26%に当たる21万5000人は自営層だった。

こうした労働市場の質の低下は、就労者の所得の回復を遅らせる原因ともなっており、DIEESEの調査によると、サンパウロ首都圏では2000年4月になって初めて平均収入が前年同月比で1.1%増加して、月毎の連続後退記録を中断した。過去2年間に起こった平均所得の低下を回復するには、まだ長期を要すると見られている。1998年4月に就労者の平均収入は9万5300レアルだったが、99年4月は8万8000レアル、2000年4月は8万2700レアルとなった。失業率は減少しても収入は下がっている。DIEESEでは雇用増加の重要性は認めながらも、非公式雇用と自営層の増加は、低収入と雇用の脆弱性を表わすものと指摘している。

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