ストライキより労使合意を重視

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

労働省の労使交渉に関する集計によると、1999年までの過去4年間に、労使交渉の態様はストライキなどの実力行使に代わって、労使協定の締結など労使間の話し合いによる合意成立をより重視する方向に変わりつつある。また、交渉のあり方も、過去には中央労組が中心となって使用者団体と交渉していたが、最近は小規模、あるいは工場単位で行われるように転換してきている。1997年の集計では9826件の労使協定が成立していたが、99年には1万6713件へと70%も増加した。

サンパウロ州は、合意成立件数で全国のトップにあるが、1997年と99年を比較すると、その割合は全体の24.4%から20.5%へ下がっており、労使交渉スタイルが全国へ普及していることが分かる。二大中央労組の一つであるフォルサ・シンジカルは、合意の成立が増加していることについて、失業の増加により多くの場合スト実施の可能性が小さくなっていること、企業利益の配分に当たって労働者の参加システムを採用する企業が増加して、企業単位で労使交渉を成立させてしまうことなどを挙げている。労働者がベースアップよりも雇用維持を優先せざるをえない状況下では、労働者は攻撃的なストよりも、防衛的な話し合いを優先させると労組では分析する。

労組の経済研究機関であるDIEESEの発表によると、1996年に全国で1258件発生したストは、97年に630件へ減少し、98年は550件、99年は11月までに404件となった。同時期に労使の話し合いによる合意の成立は年々増加し、労働者の要求案件も変化している。1996年に発生したストの77%はベースアップ要求によるものであったが、99年には26%へ下がり、一方、同期に、既得権益の防衛に関する交渉は20%から51%へ増加した。1994年には企業利益の配分に係る参加要求は一件もなかったが、99年には労使交渉件数の9.7%を占めた。

中央労組CUTのジョン・フェリシオ総務によると、政府が次第に労働法に柔軟性を持たせているために、労働者は、歴史に例がないほど過去に得た権利を失っている。労使の合意は、給料引き下げを伴う労働時間短縮、パートタイムの採用などに関する交渉で増加している。さらに、企業単位での合意成立の増加に伴い、中央労組から見ると交渉が細分化され、中央の影響力の行使が次第に困難となってきた。中央労組にとっては、1980年代に全国的な規模で指令を出しながら使用者団体に圧力を行使した時代が懐かしく、労使が対決的姿勢で大交渉を行った時代は1990年代後半で終わったと残念がっている。

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