コカ・コーラ社、雇用上の人種差別訴訟原告の一部と暫定和解

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年9月

コカ・コーラ社は、同社および同社のジュース部門ミニットメイド社の元・現従業員が1999年4月に提訴した雇用上の人種差別訴訟について暫定和解したと2000年6月14日に発表した。今回の和解の合意内容は明らかにされていないが、和解手続きが完了した際に公表する予定である。しかし、損害賠償金額という最大の係争点についての合意が将来に残されている。同社によれば、原告側が多額の賠償金を要求しているため、連邦判事の命令にもとづき外部の専門家の助けを借りて、2000年10月までに金額を決定する予定になっている。

しかし、O. J. シンプソンを弁護したコクラン弁護士と、高額の賠償金を獲得することで有名なウィリー・ゲーリー弁護士が、4人のアフリカ系アメリカ人女性への15億ドルの損害賠償を求め同社を相手取って訴訟を起こしており、同社は当面の間、雇用差別問題への対応を余儀なくされることになる。この新たな訴訟は、元の訴訟と関係ないものだが、コカ・コーラ社の採用政策、敵対的な労働環境、故意に労働者の感情を傷つけようとしていることなど8種類の差別について訴えている。今回の暫定和解の恩恵を受ける可能性がある約2000人の元・現従業員に、新訴訟の原告たちも加わる可能性もあることから、暫定和解が新訴訟にどのような影響を与えるか、今のところ不透明である。

これまでの経緯をまとめると次のようになる。1999年4月22日に、4人の黒人元・現従業員が、約2000人の黒人従業員を代表する集団代表訴訟としての扱いを求めて起こした訴訟の中で、コカ・コーラ社の黒人従業員は、白人従業員に比べ、給料、昇進、業績評価、解雇に関し広範な差別を受けていたと主張した。さらに1999年5月26日、コカ・コーラ社とそのジュース部門ミニットメイド社で働いていた元・現従業員4人が訴訟に加わった。2000年2月17日に最高経営責任者(CEO)に就任したダグラス・ダフト氏は、同年3月23日に人種による雇用差別是正措置を担当する副社長兼取締役の地位を新たに設け、その報酬を是正措置の目標達成度に関連づけることにした。同じ3月にはリストラで解雇された黒人元従業員約500人が抗議デモを行い、このデモをうけて虹の連合指導者のジェシー・ジャクソン師が3月29日に、コカ・コーラの業務執行役員と会い、和解による早期問題解決を求めた。

2000年4月11日、和解交渉が始まったが、それまでに提訴していた8人のうち4人が、ゲーリー弁護士に弁護を委ねることにした。ゲーリー弁護士は時々、虹の連合の弁護を行ってきた。またジェシー・ジャクソン師は、ゲーリー弁護士をコカ・コーラ社前会長に差別訴訟の適切な調停者として紹介したこともある。ただし、今回、連邦判事は、最初に起こされた訴訟の和解交渉にゲーリー弁護士が参加してはならないとしている。このため、これまで一丸となっていた原告の一部が離脱し、コカ・コーラ社にとって問題解決がより複雑になった。さらに5月10日には、100人の元・現従業員が公式にコカ・コーラ製品のボイコットを始めた。同社は、ベルギーでの異物混入騒ぎや業績不振に悩み、大規模なリストラを行っている。しかし、それに伴い有能な人材の流失に悩んでおり、雇用差別問題を早く解決したいところである。なお、これまで同社は、黒人や女性に対する雇用差別があったと認めていないが、原告は同社の内部調査を根拠として「黒人は、収入を上げている部門ではなく、人事部と広報部に集中的に配属されている「と主張している。

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