多くの大企業で1999年に純期間年金費用低下
企業年金が1999年の各企業の決算に与えた影響について、投資アナリストの立場から包括的な調査を行った R. G. アソシエーツ社によれば、好調な株式市場を反映して年金プラン保有の資産価値が高まり、スタンダード・アンド・プアーズ100指数に含まれる大企業の企業年金の純期間年金費用(注1)が、1997年の49億ドル(1ドル=108.2円)から99年には1億5500万ドルへと大幅に低下した。
いくつかの企業では、年金プランのあげた収益が非常に高く、企業収益を押し上げた。このような企業は、1997年には20社であったが、99年には29社に増えた。会計基準の規定により、当期の年金資産の収益が年金費用を上回った場合、損益計算書の利益に含むことができるからである。年金プランによってもたらされた利益が、営業利益の大きな割合を占める企業もあり、アレゲニー・テクノロジー社(51%)、ノーフォーク・サザン社(12%)、ルーセント・テクノロジーズ社(11%)、コースタル社(11%)、ユニシス社(11%)、ベル・アトランティック社(10%)などが目立っている。R. G. アソシエーツ社のシゼィルスキー氏は、好調な企業年金プランによって企業収益がよく見えていないかどうか投資家が注意する必要があると述べている。同氏によれば、年金プランの収益は、年金プランと年金受給者に帰属するため、稀な状況以外、税制その他の重い罰則を受けずに、企業が企業年金プランの資産を利用することができないからである。
さらに、企業の中には、一時解雇を行って年金債務を減らしたり、何万人もの従業員に対する給付削減を行い、損益計算書の利益を改善したものもある。例えば、大手小売業のKマート社では1996年に年金プランを凍結し、それ以後、従業員は追加的な給付を受けられなくなった。このため年金費用が低下し、1998年には6300万ドル、99年には6800万ドル、それぞれ年金プランが利益をもたらした。1998年に1億1000万ドルの積立不足があった年金プラン自体も、99年には1億6100万ドルの積立超過となった。一方、イーストマン・コダック社の純期間年金費用は、1997年の1億1500万ドルに対し、99年には4900万ドルに低下した。同社広報担当者によると、これは1998年に行った1万8000人の従業員削減によるところが大きい。
確定給付型年金からポータビリティ(転社しても、それまでの年金受給権を維持できる)のある混合型キャッシュ・バランス・プランへと切り替える企業も増えた。毎年の年収の一定割合を積み立てるキャッシュ・バランス・プランは、長期勤続者の年金受給額を減少させるため、これも企業年金費用の低下に大きく貢献した。ただし、キャッシュ・バランス・プランは給付削減になるとして、IBM などで従業員からの反発を受けており、政府も規制強化を検討している。
注
- 企業が実際に拠出した掛金ではない。純期間年金費用=「在職者への予測給付債務の当期中の増加額」+「利息による予測給付債務の増加額」+「当期中の年金プラン変更による予測給付債務増加のうち当期中に償却するための費用など」-「年金プランの資産の実収益」。(本文へ)
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