メーデー決起集会に連邦首相が参加

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年8月

2000年5月1日のメーデーに、ドイツ全土で約50万人が参加して労組の決起集会が開催され、労働総同盟(DGB)主催のハノーバーの中央決起集会には、シュレーダー首相が連邦首相としては1982年以来18年ぶりに参加した。2000年1月の「雇用のための同盟」の共同声明以降、景気回復と雇用市場好転の予測も手伝い、このところ連邦政府とDGBは良好な関係を維持しているが、これが同首相の集会演説にも反映した。

シュレーダー首相は、連邦政府は2002年の総選挙までに失業者数を確実に350万人を下回るようにもっていきたいとし、これは労働側との緊密な協力によって達成されうると述べた。また同首相は、ドイツの株式市場での株価の上昇との関係で、従業員が株式を所有してその利益に参加する可能性について触れ、これを「雇用のための同盟」の議題とすることを提言した。これに対してシュルテDGB会長も、雇用市場の好転に楽観的な見通しを表明し、今年度の経済成長3%の予測と若い起業家が新規の事業を設立していることの雇用への好影響を根拠として指摘した。ただシュルテ会長は、欧州でも頻発する最近の企業の買収合戦について、特に合意による合併と異なる敵対的な企業買収に懸念を表明し、これによって何万人もの労働者が雇用を奪われる可能性について警告し、シュレーダー首相もこれを受けて、ドイツ企業の従業員の共同決定権が国際的な大合併に際して排除されないように連邦政府が配慮すると述べている。

他方、最大産別労組のIGメタルのツビッケル委員長もデュッセルドルフの集会で発言し、2月末の賃金協約交渉妥結以来IGメタル内部の路線論争から有力になった改革派の意向を踏まえ、労組がもっと経済的な影響力をもつべきで、何十万人もの組合員が株式を所有すれば、従来の権限に加えて経済的決定に対するコントロール機能を獲得しうると述べている。ただ同委員長は、シュルテDGB会長同様、大買収に見られる資本主義の行き過ぎを強く批判し、労働者の雇用が奪われることを指摘して、企業買収を規制する法律の制定を要望した。

また各決起集会では、DGB傘下のすべての産別労組委員長は、経済界と連邦政府に対して訓練生教育と継続教育の強化を要請した。特にツビッケルIGメタル委員長は、「雇用のための同盟」で使用者側が訓練職の増設に同意したことを指摘し、使用者側の実行がないときには訓練職を増設しない事業所に課徴金を課すべきだと述べている。

外国人IT専門技術者導入については意見が分かれ、マイ公務員労組委員長は、早急に需要を満たす必要から導入に賛成したが、ツビッケルIGメタル委員長は、早急な導入によってドイツ企業がこの部門の訓練教育を怠る可能性を指摘して、批判的態度を示した。ただ、この問題は連邦政府が移民法の整備によって立法的に解決すべきであるとすることでは、労働側は一致した。

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