労働裁判所、不当解雇でABB社に21万ドルの支払い命令

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年8月

ハノイ労働裁判所は、スウェーデン・スイス資本の合弁企業ABB社に対し、1999年5月に同社から解雇された56人の労働者に計21万ドルを支払うよう命じた。同社経営陣は、労働契約終了以前に、この56人を一方的に解雇しており、労働裁判所は、これを違法であるとした。各失業者は、勤続年数1年ごとに1カ月分の給与に加え、1年分の給与、さらに3カ月分の職業訓練手当などを受けとり、各個人の受取額は最低で2124ドル、最高で7142ドルとなっている。ABB社は、これらの金額を15日以内に支払わねばならない。ABB社は、判決を受けいれるほかないとしているが、同社経営陣は、労働法によれば勤続1年ごとに半月分の給与を支払うことになっているのに、判決が勤続1年ごとに1カ月分の給与を支払うよう命じたことに不満を持ち、労働裁判所が原告に有利な決定をしたと考えている。

同社は1996年8月以来、約2年間に121人の工場労働者を「希望退職」させ、98年11月には、さらに109人の雇用削減を発表した。同社は雇用削減に至った理由として、生産技術革新によって余剰労働者が生まれたことと、国内の変圧器市場が縮小していることなどをあげている。同社は、操業開始以来700万ドルの損失を出している。地方の労働当局はABB社に、解雇された労働者との間で問題を解決するよう求めてきた。その間に、ベトナム側合弁パートナーが合弁の解消を希望するなど、同社は多くの問題を抱えている。同社は、ベトナムの行政が障害となって業績回復が遅れているとしており、ベトナム・インベストメント・レビュー紙に対し経営陣の1人は、ABB社がアジア開発銀行の300万ドルの資金で行われるハノイ市、ハイフォン市、ナムディン省の送電線網改良事業に、800個の変圧器を納入する契約受注も難航していると語った。しかし、契約を受注できれば、社内で仕事が足りない260人の従業員の雇用を確保したいとも述べている。

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