貧困と人口増加深刻に
新生児100万人以上が栄養失調
2000年4月17日の政府の発表によれば、この2年間に生まれた350万人の新生児のうち約30%が深刻な栄養失調状態にあることが明らかになった。栄養失調にある新生児の多くは、栄養状態の悪い貧しい母親から生まれた子供で、体重が2000グラムに満たない。このような状態の新生児は1997年の経済危機以降急速に増加しているため、国家家族計画委員会(BKKBN)のコフィファ委員長は、栄養失調の問題とそれが女性と子供に与える影響を考えるための全国的なキャンペーンを行う必要があると呼びかけた。2年前から始まったソーシャル・セーフティーネット・プログラムの中にも、子供と母親のヘルス・ケア・プログラムが存在しているが、公的な支援はもちろんのこと、NGOやメーカーからの協力なしには立ち行かない状況にあるという。コフィファ委員長は、将来を担う新生児の健康問題にもっと気を配るべきと主張している。
社会保障制度の遅れ
さらに、貧困と過剰人口がインドネシアの社会保障制度の発展を遅らせている。なぜなら社会保障制度を整備するためには、経済成長と人口成長のバランスが非常に重要であるからである。
インドネシアでは、2億700万人の人口のうち、60%が貧困線(注1)の水準またはそれ以下で暮らしており、8000万人の労働力人口のうち約80%が地方別最低賃金水準で働いていると推測されている。インドネシアの社会保障制度を担っている国営社会保険会社Jamsostekによると、労働者の賃金が低いために限られた負担金しか払えない労働者がほとんどであるという現状がある。そのため労働者の8%(約1000万人)しか社会保障制度に加わっていない。Jamsostekは社会保障制度に加わっている1000万人の労働者から10兆2900億ルピアの資金を集め、それらの資金のほとんどがインドネシア銀行の株や債権などに投資され運用されている。
現在社会保障業務を担っているのは、PT Jamsostek, PT Askes, PT Taspen, PT Asabri, PT Jasa Raharjaという5つの国営企業である。効率性の点から、この5つを統廃合し、1つの機関となって労働者、公務員の社会保障問題に取り組むべきとの声が高まっている。
注
- 貧困線とは、栄養上最低限必要とされる食事と、食料以外の必要最低限のものが購入できなくなる所得または支出水準を表す。(本文へ)
2000年7月 インドネシアの記事一覧
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