政府、中高年層の雇用対策を優先課題に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年7月

政府は、労働市場から締め出され貧しい生活を強いられている中高年層(50~64歳)の救済を優先課題とする方針を固めた。同層は推定で280万人いるとみられる。2000年4月26日に発表された内閣事務局(Cabinet Office)のレポートによると、50~65歳の3分の1が経済活動に従事していないために、英国経済は年間、生産の2%(160億ポンド)を失っている。また、現在の傾向が続けば、20年後には50歳以上のうち400万人が労働市場から閉め出されることになる。

レポートの前書きでブレア首相は、「早期退職する者の多くが自主的にそうしているわけではない。多くが貧しく、多くが居場所のなさや疎外感を感じている。私たちは資源としての中高年層を失っているだけではない。現在の傾向が続けば、社会的・経済的コストはきわめて大きくなるだろう」。

レポートは、中高年層に対する姿勢が変わるためには、政府主導で意識改革を進める必要があると論じている。また対応策として75の提案を挙げており、特に以下が重要である。

  • 「年齢に関わる現行の自主的な行為準則が有効でないことが判明した場合」、年齢差別立法を導入する。
  • 非課税・即時払いの職域年金が支払われうる最低年齢を2010年から2020年の間に現行の50歳から55歳に引き上げる。
  • 50歳以上の中高年層が職域年金を受けながら使用者のためにフレキシブルに働けるよう政府が奨励する。このためには現在見直し中の内国税収規則の改定が必要になる。
  • 企業に早期退職のコストを明示させ、職域年金に関わる企業会計の透明性を高める。
  • 公務員の退職年齢を60歳から65歳へ引き上げる方向で見直す。
  • 中高年労働者がボランティア活動で経験や技能を生かせる全国的な制度を導入する。

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