労働時間の弾力化進む

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年7月

ドイツ企業における労働時間の弾力化がここ数年進んでいることが、ドイツ商工会議所(DIHT)が2000年4月19日に発表した調査結果から明らかになった。調査は DIHT所属企業を対象に行われたが、60%の企業が1つ以上の何らかのやり方で労働時間の弾力化を取り入れているとしている。

弾力的労働時間の形態としては、週労働時間の弾力化が29%、年間労働時間貯蓄(1年間の労働時間を積み立てて、手当や有給休暇等として出し入れして利用できる)が28%、労働時間のスライド方式(中核となる労働時間を決めて、それを中心に自由に労働する)が25%、テレワークが4%、生涯労働時間貯蓄が1%だった。

調査結果によると、ドイツ企業が労働時間の弾力化を導入し始めたのは比較的新しく、65%の企業が1997年以降弾力化に取り組み始めたとしている。中でも建設業においてこの傾向が著しく、この部門では81%の企業が1997年度以降弾力化を導入するか拡張し始めたとしている。

DIHTは、このように労働時間の弾力化が増大している背景として重要なのは、ドイツ企業の競争力強化の必要性が増大したこと、ごく最近における労働協約の弾力化傾向があるとしている。

また調査結果によると、弾力化導入は企業のコスト削減のためにもなされており、60%の企業が高くつく超過労働の回避のために弾力化を導入しており、28%の企業が、労働市場で適合的な熟練労働力を容易に求められないこともあり、新規採用を回避して既存の労働力による労働時間の弾力化で対処している。その他、38%の企業が開店時間ないし操業時間の長期化のために、33%の企業(サービス業では48%)が労働に対する雇用者の満足度とモチベーションの向上を狙って、弾力化を導入している。

このように弾力化の導入が進んではいるが、DIHTによると、導入しているのは従来どおり大企業が圧倒的に多く、特に複雑な生涯労働時間貯蓄の制度を取り入れているのはほとんどが大企業だという。

他方、調査結果から約37%の企業が労働時間の弾力化に踏み切っていないが、このうち製造業では、硬直化した勤務交替システムが導入の妨げになっており、商業やサービス業では、顧客が来訪するを算定する困難さが導入を難しくしているとされる。

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