6大経済研究所、春季景気動向・労働市場予測を発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年7月

ドイツの6大経済研究所が2000年4月18日に発表した春季景気動向・労働市場予測によると、ドイツの経済状況はここしばらくなかったほど好転の兆しを見せている。

2000年度と2001年度に関する6大研究所の予測では、それぞれ国内総生産は2.8%、2.8%の増大、消費者物価は1.5%、1.3%の上昇、就業者数は3626万5000人、3654万5000人、失業者数は383万人(西独地域250万人、東独地域133万人)、350万人(西独地域220万人、東独地域130万人)、失業率は9.6%(西独地域7.7%、東独地域17.1%)、8.8%(西独地域6.8%、東独地域16.8%)となっている。2000年度の国内総生産については、6大研究所の予測は、先に発表された連邦政府の成長予測2.5%を上回っており、失業者数についても、2000年度と2001年度に、それぞれ27万人、33万人の減少が予測されており、失業者数は400万人の大台を大きく下回ることになる。

向こう2年間の成長予測の好転につき、6大研究所は世界経済状況の好転による輸出の増加が推進力になっているとしており、またこの景気拡大基調のもとの消費者物価の安定については、OPECの増産による原油価格の低下や1生産単位当たりの賃金コストの低下等に起因するとしている。

春季予測では、2000年度の労使の賃金協約交渉の経過についても触れており、化学労組(IG BCE)が柔軟な姿勢で先頭を切って妥結し、それに IG メタルが従ったこれまでの交渉経過が積極的に評価されている。6大研究所は、締結された協約が2段階で2年の有効期間をもち、賃上げが生産性向上を下回る範囲で妥結されたことにつき(本誌2000年6月号参照)、2001年度にも高い賃上げを回避でき、企業の生産計画等にもゆとりを持たせるものと評価している。ただ早期年金制については、高齢者パートタイム制の改善で対処されたことについて、雇用問題に対して高齢労働者と若年労働者の雇用の分配で対処する防御的なやり方にすぎないと消極的に評価している。同研究所は、雇用政策として高齢者パートタイム制のように年金移行を早期化する方向ではなく、むしろ定年を延長する方向で将来的には取り組むべきで、これは年金制度の全面的な改革との関連でなされるべきだとしている。

また春季予測で6大研究所は、連邦政府の外国人IT部門専門家の国内導入計画(グリーンカード計画)を積極的に評価している。同研究所は、国内導入が評価されるのは、これがドイツ国内の経済成長と雇用の創出に貢献するからだとし、その意味では連邦政府の就労期間の制限は、専門家の募集で他の諸国との競争に遅れを取ることになると反対している。ただ同研究所は、 IT部門の専門家不足は、将来的にはドイツ国内の職業教育の強化によって対処すべきであるとしている。

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