非正規雇用の増加とその要因

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年7月

政府は、最近増加し始めた雇用が大部分は「非正規雇用」である点に注目している。ブラジル地理統計資料院の調査では、2000年3月に創出された62万616人の新規雇用のうち、わずか9万2424人のみが正規雇用であった。大蔵省のエドワルド・アマデオ経済政策局長は、「経済の低迷が非正規雇用を増加させる要因で、経済成長は非正規雇用を減少させるという主張には同意しない。1994~1997年に高い経済成長を見たが、非正規雇用費用は減少しなかった。経済成長は雇用増を引き起こすが、非正規雇用の増加については説明できない」と述べている。

同局長は、非正規雇用増加の原因は様々であると見ている。

政府と国民の両者とも為政者が国民を管理するという考えが強く、法令とは守らなくてもすむと考える国民性がある。また1988年に制定された憲法は、すべての国民は無料で公立病院で治療を受ける権利があると定めたために、正規雇用で、社会保障制度に基づく分担金を支払ってまで無料治療の権利を取得する必要はないと考えるようになったことも一因である。さらに社会保障財政の悪化から、若者の間では将来この制度が自分の年金を保障することに疑問が持たれており、企業に正規雇用を要求することで、就職チャンスは小さくなるうえ、分担金まで払っておく価値があるのかと疑問を持つようになっている。過去の行政スタイルが国民にこのような疑問を持たせている。

同局長によると、憲法により、正規雇用の場合には年間30日間の有給休暇の付与、年間1カ月分のボーナス支払い、勤続年限保障基金の支払いなど、企業に多くの義務を課して正規労働者に特恵を与えたことが、正規雇用の増加を困難にしており、フランシスコ・ドルネレス労相は、労組や各社会団体の代表と、「正規雇用法」の見直しについて協議を続けていると発表した。政府はなんらの提案もせず、この困難な目的に向けて、民間からの提案による同意成立を期待している。

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