ウォル・マート精肉労働者、組織化後に職場喪失か

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年7月

国際食品・商業労組(UFCW)は2000年2月、スーパーマーケット大手ウォル・マートのテキサス州ジャクソンビルの店舗で、精肉労働者の組織化選挙に勝利した。ウォル・マート側は、この選挙結果を無効であると主張していたが、全国労働関係局(NLRB)は2000年4月24日にウォル・マートの主張を認めないとする仮決定を発表した。ウォル・マートは、組合が組織化に当たり、組合オルガナイザーが精肉労働者モーリス・ミラー氏をバーに連れて行き、「アルコール・現金(ダンサーヘのチップ)・そして性的刺激」を与えて、組合組織化に賛成するよう促したとし、組合が不当なやり方で組合組織化を成功させたと主張していた。しかしNLRBは、ミラー氏がバーの常連客であることを指摘、組合側の行動に問題はなかったと判断した。

同社は、創業以来38年になるが、組合の誕生を拒んできた。しかし、同社が生鮮食料品部門を拡張した際に、時給7ドルの店員とは異なり、特殊技能を持ち、時給も業界平均で11ドルの精肉労働者を雇うことになった。同社の精肉労働者は、通常朝5時から働き始めるが、肉が大量にあるので午後2時に作業が終わることはない。しかし同社は、時間外の割増賃金支払いが必要となる週40時間に達する前に精肉労働者を帰宅させていた。UFCWのオルガナイザーであるブラッド・エドワーズ氏は、同社ジャクソンビル店の精肉労働者モーリス・ミラー氏に、パレスティンの他のスーパーマーケットでは、組織化された精肉労働者の時給がミラー氏の時給よりも約5ドル高いだけではなく、従業員の負担をともなわない退職プランや医療保険制度があることを紹介した。昇進の遅れなどに不満を持っていたミラー氏は組合カードに署名したほか、同僚の勧誘を始めた。そして1999年12月、ジャクソンビル店の11人の精肉労働者がNLRBに申請し、組織化の選挙を行うよう求めた。これに対し上司たちは、組合のもとでは賃金が下がり、手当も少なくなるなどと説明して、組合組織化を阻もうとした。また同社は、精肉労働者の選挙申請に対し、360店の他の職種を含む全従業員が、選挙で投票すべきだと主張した。しかし、NLRBは精肉労働者だけの投票を許可し、2000年2月17日に投票が行われ、NLRBは7対3の割合(無効票2)で組合が勝利したと発表した。ジャクソンビル店での選挙に勇気づけられ、テキサス州の他の2店、フロリダ州の1店がやはりNLRBに組合組織化の選挙を申請している。

しかし、精肉労働者の組織化には、さらに大きな試練が待ち受けていた。テキサス州ジャクソンビルの精肉労働者が、2000年2月に組織化を決める投票を行った1週間後、ウォル・マートは、ジャクソンビル店および6州の他の179店舗で、精肉労働者による店内での肉の切断・加工をやめ、2000年春よりIBP社から予め包装された肉を購入すると発表した。また今後、他の店舗の一部は、ファームランド・インダストリーズ社からも同様に包装された肉を購入する予定である。ウォル・マートは、この精肉部門の外部委託が組合漬しを意図したものではなく、ジャクソンビル店の組織化投票の前から計画されていたと説明している。同社は店内の肉屋での仕事を失う約8600人の精肉労働者に、他の仕事を提供する。また、希望すれば精肉部門に残ることができるが、そこでは棚卸し以外することがほとんどなくなるため、肉を扱う技能を生かせなくなる。UFCWは、精肉部門での抜本的な改変を行う前に、ウォル・マートが精肉労働者と交渉すべきだと主張している。

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