65歳から69歳までの社会保障年金受給者の支給制限を撤廃
クリントン大統領は2000年4月7日、高齢者の所得(賃金を含むが、貯蓄や投資からの収益を含まない)が多い場合でも、社会保障年金(公的年金)の給付を削減しないとする新法案に署名した。同法案は、上・下両院を満場一致で通過していた。従来、65歳から69歳までの社会保障年金受給者の年間所得が1万7000ドル(1ドル=106.55円)を上回った場合、その超過分に対し、3ドル得るごとに社会保障年金給付を1ドル削減していたが、今後はこの削減を行わないことになる。この変更は2000年1月にさかのぼって実施され、給付削減分の還付は2000年5月から開始される。これは、高齢者の要求に敏感になっている議会が、重要な選挙が行われる2000年に、高齢者の多くが新法案の恩恵を受けるよう配慮したものである。使用者や組合も長い間、支給制限撤廃を求めていたが、最近の財政黒字の拡大によって、議会がこれを撤廃することが容易になった。
他の年代の年金受給者については変更がない。70歳以上の受給者については、従来からこのような削減は行われていなかった。また、早期引退を選択し減額された年金を受けることにした62歳から64歳の受給者については、従来どおり年間所得が1万80ドルを上回った場合、その超過分2ドルごとに年金給付が1ドル減額される。
現在、65歳から69歳までの国民930万人のうち約210万人がすでに働いており、そのうち約80万人が給付を減額されている。労働市場が逼迫する中、今回の法改正が高齢者の労働意欲を刺激し、賃金の上昇圧力を弱めることが期待されている。その効果のほどには諸説があり、カリフォルニア大学サンディエゴ校のリオラ・フリードバーグ教授の推計によれば、すでに働いている労働者は労働時間を約5%増加させる。また別の専門家によれば、この年代の約46万5000人が新たに働き始めるという。その反面、労働供給に顕著な影響を与えるという証拠はほとんどないとする研究者もいる。
2000年7月 アメリカの記事一覧
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