1999年の雇用動向

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

労働力調査(EPA)によると、1999年は雇用の面から見て女性、若年者、文盲者、職業訓練修了者、建設業労働者、および民間労働者にとって好調な年だったと言える。これら各グループでは、雇用の伸びが10%前後に達した。他方、これ以外のグループも、伸び率はより小さいもののまずまずの動きを示しており、雇用減退が見られたのは農業部門および自営業者だけであった。就業者数の伸びは全体で70万人、5%強となっている。男性の雇用増が3%程度であるのに対し、女性の雇用増は9%近くに達している。労働市場への新規参入者は、民間部門の賃金労働者としての雇用がほとんどのケースである。民間での雇用増大は5年前から続いており、1999年もその延長上にあると言える。一方公共部門での雇用は、前年に過去5年間で初めて減少した後、わずかであるが上昇している。逆に自営業者および家業手伝いのグループでは、雇用後退が顕著に見られた。

現在の経済・雇用拡大局面の主役を演じているのは、建設業である。建設部門の労働者は全就業人口の11%以下であるが、同部門での1999年の雇用増は平均の2倍で、年間雇用創出数の25%を占めている。サービス部門の雇用増も6%とかなり高い。工業部門では輸出の不振に強く影響を受ける形で、雇用増は2.1%にとどまった。同部門では1997年~1998年に大きく雇用が伸びたが、ここへ来て減速が見られたことから、再び雇用後退傾向に戻る可能性も考えられる。農業部門ではEU共通農業政策により雇用破壊に一時歯止めがかかったかに見えたものの、就業者減は時代の趨勢でありいかんともしがたい。

失業者数は1999年を通じて減少し、失業率は15.4%まで下がった。これは1981年第4四半期以来の低い水準である。失業者数の減少は男性で17%だったのに対し、女性では11%以下である。男女間の格差は、第4四半期になって広まる傾向にある。

1998年第4四半期には失業者の56.5%が女性だったが、現在ではこの値はさらに2%近く増えている。経済・雇用ともに好調な現在、女性の雇用増は女性の労働力人口増によって相殺されている。実際、1999年の女性労働力人口は男性の6倍も増えている。

部門別では、失業者減が最も大きかったのは工業部門で、13%減となっている。建設部門が10%減とこれに続く。全労働者の3分の2を占めるサービス部門では、8.5%の失業減が見られた。年齢別では最若年層での失業減が最も大きく、15%を超えている。しかしながら、この統計にあらわれないデータ、すなわち現在の景気局面においては最若年層の労働力人口増が見られなかったことを考慮すべきであろう。このグループは失業者全体の50%近くを占める。学業水準による失業のばらつきも、さらに強まる傾向にある。中・高等教育を受けた労働者のグループでは失業率の低下が大きいが、文盲や教育を受けていないグループでは失業者数が8.5%増えている。

以上のすべての要因を重ねてみると、失業の不均衡分布が拡大しつつあるのがわかる。唯一これを是正するかに見えるのは、長期失業者数の減少であろう。すなわち1999年を通じて、1年以上失業状態にある労働者の5人に1人がなんらかの職を見つけている。いずれにせよ、この傾向も第4四半期にはストップしている。

しかし、年単位では見失いかねないが、1999年の第4四半期には1995年以来初めて失業増が見られる。最終的な失業者数は256万2000人となっている。雇用創出が労働力人口の増大を上回っているため、失業率は低下を続けている。しかし、1999年の第3四半期~第4四半期には、失業者数はほとんど減っていない。雇用に関しては年の後半が前半より悪いのは以前から見られる現象であるが、それにしても1996年以降は雇用の改善がほぼ途切れずに続いていたことを考えれば、1999年後半でその傾向が初めて破られたと言える。第2四半期の失業者数が1998年同期より17%少なかったのに対し、第4四半期では13%減にとどまっている。

失業に見られる地域間格差は、縮小の兆しすら見えない。レリダやソリアなどのように失業率が5%程度の県もあれば、南部のカディス、バダホスなどの失業率はそのほぼ6倍である。自治州別で見ると、ナバラ、バレアレス、アラゴン、ラ・リオハでは失業率が10%以下で、逆にアンダルシアおよびエストレマドゥラでは25%を下ることはない。

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