海外出稼ぎ労働をめぐる諸問題

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

アラブ首長国連邦でメイドとして働く35歳のインドネシア人女性に、2000年2月28日、死刑判決が下されたことを受け、インドネシアの海外出稼ぎ労働に関する問題が再び取りざたされている。

このメイドは、同じ家の使用人として雇われていたインド人との不義によって死刑宣告を受けたが、その裁判で彼女がアラビア語を話せないということと、法廷通訳もいなかったために彼女にとって不利な判決が下ったことが明らかになった。インドネシア政府は、彼女の保護のために弁護士と通訳を派遣し、アルウィ外相はアラブ政府に彼女に対する刑の軽減と延期を求めた。

インドネシア政府としては、海外出稼ぎ労働者から国内に送られてくる仕送りが貴重な外貨であることや、国内の失業問題を緩和するとの観点から、海外出稼ぎを奨励している。しかし、労働者の教育、法律的な知識や相手国の情報提供など、労働者保護のための対策が十分に行われているとは言い難い。

ボメル労相によると、中東地方にある各インドネシア大使館には、使用者とのトラブルから解雇されたインドネシア人労働者が何千人も保護されているという。彼ら、彼女らの多くは、使用者やその家族とのいざこざから、暴力を受けたり給与を支給されずに解雇されてしまう。しかし、インドネシアに帰国したくても費用が賄えないために途方に暮れているというケースが非常に多い。労相は、出稼ぎを斡旋した企業が労働者に対するケアを怠っているためにこのような結果になっていると述べた。

中東以外に、インドネシア人の労働者が多く出稼ぎに行っている国として、マレーシアがある。マレーシアにはインドネシア人を含めて15万人の外国人メイドが働いているが、2000年3月には15~16歳のインドネシア人の少女たちが、貧しい両親に売られメイドや売春婦として働かされていたという事件が報告されている。彼女たちは、偽造パスポートでマレーシアに入国させられ、給与の支払いもなく働かされていた。同じく3月に、マレーシアで働くインドネシア人の違法労働者589人が強制送還された。彼らの多くは、新しい行政市となる予定のプトラジャで建設業に従事していた。マレーシアは、インドネシアのスマトラ島から50kmという距離の近さと、言葉の問題がないという点から、出稼ぎの場所として人気がある。

様々な海外出稼ぎに関するトラブルが報告されているが、依然として人気の高い海外出稼ぎの背景には、国内の高い失業率と、海外で得られる相対的に高い賃金という要因がある。

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