最低賃金引き上げ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

最低賃金が2000年10月より10ペンス引き上げられ、1時間当たり3.70ポンドになる。23歳未満の若年労働者については、6月より20ペンス引き上げられ、3.20ポンド。1999年4月に導入されて以来、初めての引き上げとなる。

政府は当初、最低賃金額の2000年中の引き上げを見送り、2001年まで凍結することを示唆していた。方針を転換した背景には、組合と労働党議員から圧力があったと言われている。労働党議員らは、政府が労働党の伝統的な支持者に対し十分な配慮を示していないと考えている。

実際、3月に入り、労働組合会議(TUC)のモンクス書記長がブレア首相に対し、全国一律最低賃金を凍結する決定が下された場合、労組との間で労働党が政権に就いて以降最大の対立が生じると警告していたことが明らかになっている。モンクス書記長は労働党議員の組合支持グループと結束して、最低賃金を引き上げなければ政府は大々的な抗議運動に直面することになると伝え、TUC総評議会は、全会一致でこれを支持している。

ブレア首相は以前、モンクス書記長に対し、そのような抗議運動を容認しないと述べていたが、今回は労組の要求に譲歩したことになる。

労働組合は全国一律賃金の引き上げを歓迎しながらも、規則的な引き上げを年1回実施することを政府が明言しようとしないことに不満を表明している。運輸一般労組(TGWU)のビル・モリス書記長は、最低賃金は規則的に引き上げられてこそ将来にわたって信頼されるものとなりうると指摘している。公務員労組(Unison)のプレンティス書記長によると、時間当たり10ペンスの引き上げは労組の期待をはるかに下回っており、多くの労組はこれよりもずっと高い最低賃金を要求しつづけてきた。例えばTGWUは5ポンドの最低賃金を要求している。

一方、使用者団体は、今回の引き上げ決定を受け入れている。ただし、英国産業連盟(CBI)のジョーンズ事務総長は、経済成長と雇用増大が脅かされるとの立場から、毎年の自動引き上げには反対している。もっとも、使用者の立場は一様ではなく、最低賃金委員会に対し、人件費を安定させるために毎年の小幅な引き上げを支持する旨を伝えている企業もある。

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