BMW、ローバーを売却

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年6月

独自動車大手のBMWは2000年3月16日、傘下の英自動車メーカー、ローバーの普通乗用車部門を英投資家グループのアルケミー・パートナーズに売却することを決定した。ただ、売却先は変更される可能性も残されている。さらに翌17日、「ランド・ローバー」ブランドを米自動車大手のフォード・モータースに売却することも明らかにした。これでBMWは超小型車「ミニ」の新型車だけを製造・販売することになる。

BMWグループの総販売台数の4割弱を占めるローバーは、レクリェーショナル・ビークル(RV)などへの拡大路線を担ってきたが、1999年の販売は、前年比6万台減の43万台に落ち込んだ。なかでもローバーの主力車種である中・小型普通乗用車は1998年に比べ20%以上も販売が落ち込み、1999年に24億マルクに及ぶ巨額の損失を生む原因となっていた。今回、同車種と主力のロングブリッジ工場(イングランド中西部)などを投資家グループのアルケミー・パートナーズに売却することになった。

アルケミーは1997年設立の新興投資グループ。ローバーのような大企業を経営した経験はなく、経営状態の悪い企業や部門を買い取り、経営を立て直した後に株式上場や他企業への売却で利益を出すことが得意。アルケミーは、ロングブリッジ工場での年間生産台数を現在の18万台から10万台未満に縮小し、4年後にローバーを売却する方針をすでに打ち出している。

労組は今回の決定に強く反発している。アルケミーが買収した場合、ローバーだけで少なくとも9500職が失われ、部品関連企業ではさらに数万職が失われるだろうと警告している。

欧州内で自由競争の旗振り役を演じてきた英国政府も、独断で売却先を決めたBMWに「怒りを感じる」(ブレア首相)と反発、今回は雇用最優先の姿勢を鮮明にしている。バイヤーズ貿易産業相は、アルケミーの方針に強い懸念を表明、ローバーのセーマン会長に、BMWとアルケミーの交渉期間となっている6週間以内に他の売却先を探すよう要請した。

この間、運輸一般労組(TGWU)はアルケミーへの売却阻止に向けた動きを強めていたが、4月10日、政府とのハイ・レベル協議の結果、ローバー工場の数千職を救う別の入札が行われる可能性が浮上、14日にローバー元社長のジョン・タワーズ氏の率いるグループが買収に名乗りを上げた。「雇用を維持できる買い手がいれば支援する」との立場を表明している政府と労組はともに、同グループの支援に回るものと見られる。

一方、「ランド・ローバー」のフォードへの売却については、労組は好意的に受けとめており、TGWUのモリス書記長は、統一ローバーの存続を理想としながらも、「フォードのような一流企業と高品質のランド・ローバーの組み合わせには納得できる」とコメントしている。

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